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制度・事業所向け

介護報酬改定で訪問介護を見るときのポイント

Published
作成日: 2026年7月7日
Updated
最終更新日: 2026年7月8日

介護報酬改定のたびに訪問介護は何が変わるのか。2024年度改定の基本的な視点や処遇改善加算・特定事業所加算の見直しをふまえ、利用者・家族が事業所選びやケアマネ相談で確認すべき着眼点を整理してご紹介します。

01介護報酬改定とは何か——なぜ数年に一度、訪問介護の仕組みが変わるのか

訪問介護をはじめとする介護サービスの報酬(事業所に支払われる対価の単価)は、原則として3年ごとに見直されます。これが「介護報酬改定」です。直近では2024年度(令和6年度)に改定が行われました。

厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会が示した資料によると、2024年度改定は「地域包括ケアシステムの深化・推進」「自立支援・重度化防止に向けた対応」「良質な介護サービスの効率的な提供に向けた働きやすい職場づくり」「制度の安定性・持続可能性の確保」という4つの視点を基本として実施されました。

ここで大切なのは、報酬改定=利用者の自己負担や使えるサービス内容が一律に変わる、という話ではないという点です。改定は事業所が算定する「加算」(一定の体制や取り組みに対して上乗せされる評価の仕組み)の要件見直しが中心であり、その加算を実際に取得するかどうかは事業所ごとに異なります。そのため「自分たちの利用がどう変わるか」は、契約している事業所に個別に確認しない限り分かりません。

また改定内容は年々複雑になっており、ニュースなどで見聞きする情報が必ずしも自分の状況にそのまま当てはまるとは限りません。本記事では2024年度改定の全体像を確認しながら、家族・ケアマネジャーが「事業所を見るときに何を聞けばよいか」という視点に落とし込んでいきます。具体的な単位数や自己負担額については、最新情報を事業所またはケアマネジャーに確認することを前提として読み進めてください。

介護報酬改定は原則3年ごとに行われ、直近は2024年度(令和6年度)に実施されたことを示す時系列図

02在宅利用者にとって報酬改定はどこに影響するのか

報酬改定が行われると、多くの方がまず気になるのは「自己負担額は増えるのか」「今のサービス内容は続けられるのか」という点だと思います。結論から言うと、これらは事業所ごとの加算算定状況やご本人のケアプラン(居宅サービス計画)の内容によって変わるため、本記事のような一般的なガイドで断定することはできません。

最も確実な確認方法は、契約している訪問介護事業所から交付される「重要事項説明書」や、改定にともなう説明を直接受けることです。介護保険法に基づき、事業所は運営規程やサービス内容、費用の説明義務を負っています。改定後に何らかの変更がある場合は、事業所側から説明があるのが通常の流れです。説明がない場合や不明な点がある場合は、遠慮せず事業所の窓口やサービス提供責任者に問い合わせてよい場面です。

また、介護報酬改定の時期は、ちょうどケアプランの更新時期と重なることもあります。ケアマネジャーとの定期的なモニタリングやサービス担当者会議の機会に、「今回の改定で私たちのプランに関わる変更はありますか」と尋ねてみるのも良いタイミングです。

重要なのは、報酬改定のニュースで見た数字や制度変更の話をそのまま自分のケースに当てはめて判断しないことです。制度の枠組みは全国共通でも、実際の運用は事業所の体制や地域の実情によって異なります。気になる点があれば、まずはケアマネジャーに相談し、必要に応じて事業所や市区町村の窓口に確認する、という順番を意識してください。

03処遇改善加算の一本化——「人材が安定している事業所」を見分ける視点

2024年度改定の柱のひとつが、介護職員の処遇改善(賃金改善)に関する加算の見直しです。厚生労働省のリーフレットによると、従来別々に存在していた「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」の3つが、2024年6月から「介護職員等処遇改善加算」として一本化されました。算定要件はキャリアパス要件、月額賃金改善要件、職場環境等要件の3つの類型で構成されています。

この加算は、介護現場で働く職員の賃金水準を引き上げ、人材の確保・定着を図ることを目的としています。利用者・家族の立場から見ると、加算そのものの有無で「サービスの質」を単純に判断することはできませんが、加算を取得している事業所は一定の賃金改善・職場環境整備の取り組みを行っているという参考情報にはなります。ヘルパーの入れ替わりが少ない、担当者が長く続いているといった安定性は、在宅介護を長期で続けるうえで安心材料のひとつになり得ます。

事業所がどの加算を取得しているかは、厚生労働省が運営する「介護サービス情報公表システム」で確認できます。都道府県ごとに事業所の運営情報や体制が公表されており、契約前・契約後を問わず閲覧可能です。事業所探しの際やケアマネジャーに相談する際には、「処遇改善加算は取得されていますか」「職員の定着状況はどうですか」と具体的に尋ねてみるとよいでしょう。ただし加算取得の有無だけで事業所の優劣を断定することはできず、あくまで判断材料のひとつとして捉えることが大切です。

04特定事業所加算・看取り対応加算など、体制面の見直しから読み取れること

2024年度改定では、訪問介護の「特定事業所加算」(人材要件や重度者対応など一定の体制を満たす事業所を評価する加算)についても見直しが行われました。厚生労働省の資料では、中山間地域等における継続的なサービス提供や、看取り期にある利用者など重度者へのサービス提供を行っている事業所を適切に評価する観点から、体制要件・人材要件・重度者対応要件の組み合わせが再編されたとされています。

また訪問看護など関連サービスの分野では、緩和ケア・褥瘡(じょくそう)ケア・人工肛門ケアなどの専門研修を受けた看護師による計画的な管理を評価する「専門管理加算」が新設されたほか、看取り期の対応を評価する「ターミナルケア加算」についても評価の見直しが行われ、加算額が引き上げられました。これらは訪問看護など別サービスの加算ですが、在宅での看取りを支える体制全体が強化される方向性を示すものとして押さえておく価値があります。具体的な加算額や算定要件は改定内容や事業所の体制によって異なるため、正確な内容は事業所またはケアマネジャーに確認してください。

利用者・家族の視点では、「重度化しても在宅で暮らし続けられるか」「看取りまで自宅で過ごしたい場合に対応してもらえるか」は大きな関心事だと思います。事業所を探す際やケアマネジャーに相談する際には、「重度者や看取り期の対応実績はありますか」「24時間の連絡体制はありますか」「訪問看護など医療系サービスとの連携体制はどうなっていますか」といった質問を具体的にしてみてください。特定事業所加算を取得しているかどうかは、前述の介護サービス情報公表システムでも確認できる項目のひとつです。

05総合事業(介護予防・日常生活支援総合事業)と訪問介護の違いに注意

訪問介護について調べていると、「総合事業」という言葉に出会うことがあります。これは正式には「介護予防・日常生活支援総合事業」といい、要介護1〜5の方が利用する訪問介護(介護保険の訪問介護サービス)とは別の制度です。混同すると必要な支援を受けそこねる可能性があるため、まず違いを押さえておきましょう。

厚生労働省のガイドラインによると、総合事業は市町村が中心となり、地域の実情に応じて住民等の多様な主体が参画し、多様なサービスを充実させることで地域の支え合い体制づくりを推進する事業で、主に要支援認定を受けた方などを対象としています。総合事業の訪問型サービスには、現行の訪問介護に相当する専門的サービスのほか、緩和した基準によるサービス、住民主体の支援、保健・医療専門職による短期集中サービスなど、複数の類型が示されています。この枠組み自体は制度創設時から続いているものですが、実際の運用や類型の呼び方は市区町村ごとに異なるため、現時点の内容は必ず市区町村の窓口で確認してください。

ここで特に重要なのは、総合事業の基準・単価・利用条件は、国が示す基準や単価の上限を踏まえたうえで市町村が独自に設定しているという点です。つまり、同じ「総合事業の訪問型サービス」という名称でも、内容や利用できる範囲は市区町村によって異なります。「隣の市ではこうだった」という情報がそのまま自分の住む市区町村に当てはまるとは限らないため、必ず市区町村の窓口(地域包括支援センター等)へ確認してください。

また、対象者についても、要支援認定を受けた方に加えて「基本チェックリスト」に該当する方(介護予防・生活支援サービス事業対象者)が含まれる一方、65歳未満の第2号被保険者は基本チェックリストではなく通常の要介護認定等の申請が必要です。ご家族がどちらの制度を利用しているのか分からない場合は、ケアマネジャーまたは地域包括支援センターに確認することをおすすめします。

06生活援助と身体介護の区分——老計第10号を基準に何が確認できるか

訪問介護のサービス内容は、大きく「身体介護」と「生活援助」に分かれます。この区分の根拠となっているのが、厚生労働省が示す「老計第10号」(訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について)という通知です。

老計第10号では、身体介護を利用者の身体に直接接触して行う介助サービス等と位置づけ、生活援助を身体介護以外の訪問介護であって、掃除・洗濯・調理等の日常生活の援助のうち、本人や家族が家事を行うことが困難な場合に行われるものと定義しています。つまり生活援助は「本人・家族による家事が困難であること」が前提になっている点がポイントです。

また老計第10号には、生活援助の内容に含まれないものとして「商品の販売・農作業等生業の援助的な行為」「直接、本人の日常生活の援助に属しないと判断される行為」が明記されています。同居家族分の家事や大掃除、ペットの世話、来客対応などについて「頼めない」という断定的な情報を見かけることがありますが、これらの個別の具体例は老計第10号の本文に直接の例示があるわけではなく、実際の可否は事業所やケアマネジャーとの相談によってケースごとに判断されるものです。本記事では断定を避け、「事業所・ケアマネジャーへの確認が必須」という前提でお伝えします。

なお、身体介護における「自立生活支援のための見守り的援助」(利用者と一緒に行う掃除・調理や、声かけ・誘導による食事介助など、本人の自立を支援する視点での関わり)についても老計第10号で整理されています。この見守り的援助を含め、老計第10号の具体的な適用範囲や過去の改正内容の詳細は、本記事では断定を避け、事業所・ケアマネジャーへの確認を前提としてお伝えします。「一緒に行うことで自立を支援する」という視点が重視されている点を知っておくと、事業所への相談がしやすくなります。具体的にどこまで頼めるかは、初回面談やサービス担当者会議の場で遠慮なく確認しましょう。

07医行為との線引き——服薬や体調管理をめぐる誤解を防ぐ

訪問介護のヘルパーが体調管理や服薬にどこまで関われるのか、不安に思うご家族は少なくありません。この線引きの根拠となるのが、2005年(平成17年)7月26日付の厚生労働省医政局長通知(医政発第0726005号)です。

この通知では、水銀体温計・電子体温計等による体温測定、自動血圧測定器による血圧測定、一定の条件下での軟膏塗布(褥瘡の処置を除く)・湿布の貼付・点眼薬の点眼の介助などは、原則として医師法第17条等が規制する「医行為」には該当しないとされています。つまり、こうした行為はヘルパーが一定の条件のもとで行うことができるとされていますが、「ヘルパーは医療行為が一切できない」あるいは「何でもできる」といった単純な断定は誤りであり、避けるべきです。実際に依頼できる範囲は利用者の状態や事業所の体制によって異なるため、必ず事業所に確認してください。

また「服薬の介助」と「服薬の管理」は区別して考える必要があります。薬を飲むタイミングで声をかけたり、薬を手元に用意したりする「介助」と、薬の量や飲み合わせを判断する「管理」とでは、関われる範囲が異なります。この違いについても一律の説明は難しく、事業所やケアマネジャー、必要に応じて主治医・薬剤師を交えて確認することが大切です。

さらに、痰の吸引や経管栄養といった「喀痰吸引等」については、法律上、一定の研修を修了したヘルパーが、都道府県等に登録された事業所に所属している場合に限り実施できるという制度上の要件があります。ご家族に医療的ケアが必要な場合は、「その事業所が喀痰吸引等の登録事業所であるか」「対応できる研修修了者が在籍しているか」を、契約前に必ず確認してください。詳細な可否判断は、事業所・ケアマネジャー・主治医に相談することをおすすめします。

08業務継続計画・虐待防止体制——見えにくいが確認しておきたい運営体制

サービス内容そのものではなく、事業所の「運営体制」にも2024年度改定で新しい評価軸が加わりました。ひとつは業務継続計画(BCP:Business Continuity Plan、災害や感染症が発生した場合にもサービスを継続するための計画)に関するものです。厚生労働省の資料によると、一部のサービスを除くほぼ全てのサービスを対象に、BCPが未策定の事業所に対する減算が新設されました。訪問系サービス等については、一定期間、減算適用が猶予される経過措置が設けられています。

もうひとつは高齢者虐待の防止に関する体制です。同じく一部のサービスを除く全サービスを対象に、虐待の発生またはその再発を防止するための措置(委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者の選任等)が講じられていない場合の減算が新設されました。一部のサービスについては数年間の経過措置が設けられています。経過措置の期限や対象サービスの詳細は改定時期によって更新されるため、最新情報は事業所またはケアマネジャーに確認してください。

これらは一見、利用者に直接関係のない「事務的な話」に見えるかもしれません。しかし、地震・台風などの災害時や感染症流行時にもサービスが継続される体制があるか、職員による不適切な対応を防ぐ仕組みが整っているかは、在宅介護を安心して続けるうえで実は重要な視点です。特に一人暮らしの高齢者や、頻回の訪問が必要な重度の方にとっては、災害時にサービスが止まらない体制があるかどうかは大きな関心事になり得ます。

こうした運営体制の詳細は、事業所のパンフレットだけでは分かりにくいことが多いため、契約前後の面談で「災害時や感染症流行時の対応体制はどうなっていますか」「万が一の際の連絡方法を教えてください」と直接尋ねてみるとよいでしょう。また、都道府県への報告事項の一部は前述の介護サービス情報公表システムでも確認できます。

事業者として情報発信・公表の実務を整理したい場合は、訪問介護のサービス品質を伝える情報整理(事業者向け)を参照してください。

09改定内容を踏まえて、事業所探し・ケアマネ相談で実際に確認すべきこと

ここまで見てきたように、介護報酬改定は「加算」という仕組みを通じて、事業所の体制・人材・運営のあり方に影響を与えます。しかし、その内容は事業所ごとに異なり、利用者・家族の自己負担やサービス内容に直接どう反映されるかは、一般論では語れません。最後に、事業所探しやケアマネジャーへの相談の際に実際に確認しておきたいポイントを整理します。

第一に、契約時・更新時に交付される重要事項説明書を必ず確認し、不明点はその場で質問することです。加算の算定状況や費用の仕組みは、この書類に記載されています。第二に、介護サービス情報公表システム(https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/)で、事業所の運営情報・体制・加算の取得状況を事前に調べておくことです。都道府県ごとに検索でき、契約前の比較検討にも使えます。

第三に、要支援の方やこれから要介護認定を受ける方は、自分たちが利用する(利用予定の)サービスが訪問介護なのか、総合事業の訪問型サービスなのかを、ケアマネジャーまたは地域包括支援センターに確認することです。総合事業は市区町村ごとに内容が異なるため、他の地域の情報をそのまま当てはめないよう注意してください。

第四に、生活援助・身体介護の区分や医療的ケアの可否など、老計第10号や医政局長通知に基づく線引きについては、一般論での断定を避け、必ず個別の状況を事業所・ケアマネジャーに相談することです。本記事はあくまで制度の枠組みを整理したものであり、費用や可否の最終判断は、事業所・ケアマネジャー・市区町村といった一次情報源への確認を経て行ってください。分からないことをそのままにせず、遠慮なく尋ねる姿勢が、安心して在宅介護を続けるための土台になります。

FAQ

このガイドのよくある質問

改定内容がどう反映されるかは、契約している事業所がどの加算を算定するかによって異なり、一律には言えません。自己負担額やサービス内容の変更点は、事業所から交付される重要事項説明書や、契約時・更新時の説明で確認するのが基本です。不明な点があれば、遠慮なくケアマネジャーや事業所の窓口に直接お尋ねください。
処遇改善加算は介護職員の賃金改善・人材の確保定着を目的とした加算で、2024年6月から「介護職員等処遇改善加算」に一本化されました。取得の有無だけでサービスの質を断定することはできませんが、職員の定着状況などを判断する参考情報にはなります。加算の取得状況は介護サービス情報公表システムで確認できます。
要介護1〜5の方が使う訪問介護と、要支援等を対象とする総合事業の訪問型サービスは別制度です。総合事業の内容・基準・利用条件は市区町村ごとに異なるため、他地域の情報をそのまま当てはめず、ケアマネジャーまたはお住まいの市区町村・地域包括支援センターに確認することをおすすめします。
老計第10号では、生活援助は本人や家族が家事を行うことが困難な場合に行われるものとされ、商品の販売や生業の援助的行為、本人の日常生活の援助に属しない行為は含まれないとされています。ただし個別の具体例の可否は一律に断定できないため、事業所・ケアマネジャーに具体的な状況を伝えて確認してください。
2005年の医政局長通知では、自動血圧測定器による血圧測定や体温測定などは原則として医行為に該当しないとされています。ただし「何でもできる/一切できない」といった単純な断定は誤りです。服薬も「介助」と「管理」で範囲が異なるため、具体的にどこまで対応できるかは事業所・ケアマネジャーに確認してください。

Sources

参照・確認する一次情報

制度や費用は変更されることがあるため、公式情報と事業所の資料を確認しながら更新します。

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