「訪問介護を使いたいのに、ケアマネジャーが決まらない」。要介護認定の結果が届いて居宅介護支援事業所に電話をかけたら、「今は新しい方を受けられない」と言われた。そんな場面で手が止まってしまうご家族がいます。ケアマネジャーが決まらないとケアプランが作れず、訪問介護も始められません。断られたときに制度上どう扱われるのか、次にどこへ連絡すればよいのかを、国の基準と自治体の案内をもとに整理しました。

この記事の結論は、次の3つです。

  • 居宅介護支援事業所は、正当な理由なく依頼を断れません(運営基準第5条)。ただし「担当できる人数がいっぱい」「自宅が事業所の実施地域の外」は、国の解釈通知が示す正当な理由にあたります。そのとき事業所には、ほかの事業所を紹介するなどの対応が求められています(同第6条)。
  • 断られたら、「空きのある事業所を教えてください」とその場で頼み、並行して地域包括支援センターか市区町村の介護保険担当課に相談します。要支援の方は、地域包括支援センターが最初の窓口です。
  • どうしても見つからない場合の最後の手段として、ケアプランを本人・家族が作って市区町村に届け出る「自己作成」があります。手続きの負担が大きいため、まず窓口で探してもらうことを優先してください。

ケアマネジャーに断られるのは、制度上ありえる?

ありえます。ケアマネジャー1人が担当できる人数には基準上の目安があり、それを超える依頼や、実施地域の外からの依頼は断る正当な理由になります。ただし事業所は、ほかの事業所を紹介するなどの対応をとる必要があります。

ケアマネジャーが所属する居宅介護支援事業所の運営ルールは、厚生労働省令「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」で決まっています。第5条は「正当な理由なく指定居宅介護支援の提供を拒んではならない」と定めています。

何が「正当な理由」にあたるかは、国の解釈通知(平成11年老企第22号)が例を挙げています。

  1. 事業所の今いる職員では、申込みに応じきれない場合
  2. 申込み者の住まいが、事業所の「通常の事業の実施地域」の外にある場合
  3. 申込み者が、ほかの居宅介護支援事業所にも同時に依頼していることが明らかな場合

1つ目に関係するのが、人員の基準です。同じ基準の第2条は、利用者44人ごとにケアマネジャー1人を置くことを求めています(国のケアプラン情報共有システムを使い、事務職員を置いている事業所は49人ごと)。要支援の方の担当(介護予防支援)は、1人を3分の1人として数えます。事業所の職員数に対して利用者が埋まっていると、新しい依頼を受けられなくなる仕組みです。

一方で、第6条は、自分の事業所で対応するのが難しいと判断した場合に、「他の指定居宅介護支援事業者の紹介その他の必要な措置」を講じることを事業所に求めています。断られた電話を「そうですか」で切らずに、次の行き先を聞いてよい根拠がここにあります。

断られたら、まず何をすればいい?

その電話の中で「近くで新規を受けている事業所を知っていたら教えてください」と頼みます。あわせて、地域包括支援センターか市区町村の介護保険担当課に、事業所の一覧と空き状況の目安を聞いてください。

断られた直後にできることを、順番に並べます。

  1. 断った事業所に紹介を頼む:同じ地域の事業所どうしは、どこが新規を受けているかを把握していることがあります。
  2. 地域包括支援センターに相談する:高齢者の介護の総合相談窓口で、市区町村が設置しています(運営を法人に委託している地域もあります)。居宅介護支援事業所の一覧をもらえるほか、事情を伝えると探し方の助言を受けられます。
  3. 市区町村の介護保険担当課に相談する:居宅介護支援事業所の一覧を配っている自治体もあります。地域包括支援センターがどこか分からないときの入口にもなります。
  4. 自分でも探す:厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」で、住所の近くの居宅介護支援事業所を検索できます。使い方は介護サービス情報公表で訪問介護を見る方法と同じ手順です。

電話をかけ直すたびに一から説明しなくて済むよう、次のメモを手元に置いておくと話が早く進みます。

  • 本人の住所(介護を受ける場所)と、要介護度または申請中であること
  • 困っていること(例:一人で入浴できない、退院日が決まっている)
  • 使いたいサービス(訪問介護、デイサービスなど)と、急ぐ理由
  • すでに断られた事業所の名前と理由

「退院日が決まっている」「一人暮らしで食事がとれていない」など、急ぐ理由ははっきり伝えてください。急ぎの度合いが分かると、窓口も優先順位をつけて動きやすくなります。

居宅介護支援事業所に断られたときの動き方。断った事業所に紹介を頼み、地域包括支援センターまたは市区町村の介護保険担当課に相談し、それでも見つからない場合の最後の手段としてケアプランの自己作成がある流れ

要支援と要介護で、相談先は変わる?

変わります。要支援1・2の方のケアプランは、地域包括支援センターが担当するのが基本です。要介護1〜5の方は、居宅介護支援事業所のケアマネジャーに依頼します。

要支援の方の計画づくり(介護予防支援)は、もともと地域包括支援センターの役割です。2024年4月からは、市区町村の指定を受けた居宅介護支援事業所も、要支援の方と直接契約して介護予防支援を行えるようになりました。ただし横浜市の案内では、この変更は介護予防支援の場合に限られ、ヘルパーとデイサービスだけを使う方などは従来どおり地域包括支援センターとの契約になると説明されています。どちらになるかは住んでいる自治体で確認してください。

要介護認定の結果が出る前でも、訪問介護を急いで使い始めたい場合は「暫定ケアプラン」で先に動ける場合があります。退院が近いときの進め方は退院後すぐに訪問介護は使える?暫定ケアプランで待たずに利用開始する方法で詳しく取り上げています。相談窓口の基本的な違いはケアマネ・地域包括支援センターへの相談にまとめています。

どうしても見つからないときの「自己作成」とは?

本人や家族がケアプランを作り、市区町村に届け出る方法です。届け出れば1〜3割の自己負担でサービスを使えますが、事業所との調整や毎月の書類づくりを自分で担うため、最後の手段と考えてください。

介護保険法施行規則第64条は、本人がサービスの利用計画をあらかじめ市町村に届け出ている場合も、事業所が介護保険から直接支払いを受ける(利用者は自己負担分だけを払う)扱いの対象に含めています。これがケアプランの「自己作成」(セルフケアプラン)です。

ただ、実務の負担は小さくありません。

  • 加古川市は、自己作成の届出書に加えて、居宅サービス計画書やサービス利用票、給付管理票などの書類の提出を求めています。また、本人や家族が制度を理解して自ら計画を立て、その計画に責任を負うこと、事業所との調整やトラブル対応も自分で行うことを前提としています。
  • 東京都中央区は、自己作成の場合は区に届け出て確認を受ける手続きが月ごとに必要だと案内しています。
  • 中央区はあわせて、計画の届出なしにサービス事業者へ直接依頼した場合は、いったん全額を自己負担し、後から認められた額の9割・8割・7割が支給されると説明しています。

必要な書類や手続きの細かな点は自治体によって違います。自己作成を考えるときも、まず市区町村の介護保険担当課に相談し、「ケアマネジャーが見つかるまでの間だけ」といった使い方ができるかを確認してください。ケアプランそのものの役割はケアプランと訪問介護の位置づけで説明しています。

ケアマネジャーが決まったら、訪問介護の事業所はどう探す?

ケアマネジャーに候補を挙げてもらうのが基本ですが、家族が自分で候補を探して伝えてもかまいません。自宅が事業所の実施地域に入っているかを先に確かめておくと、話が早く進みます。

居宅介護支援の基準第4条は、利用者が複数のサービス事業所の紹介を求められることを、ケアマネジャーが説明するよう定めています。ケアマネジャーが挙げた事業所だけに決めなければならないわけではありません。ケアマネジャーとヘルパーの事業所がそれぞれ何を受け持つかは、ケアマネジャーと訪問介護事業所の役割分担を参考にしてください。

ケアマネジャー探しと並行して、訪問介護の事業所を下調べしておくこともできます。介護ほうもんさーちの検索では、介護を受ける場所の住所から、実施地域に入っている事業所を絞り込めます。候補が見つかったら、ケアマネジャーとの最初の面談で「この事業所は空きがありますか」と聞くと、ケアプランづくりが進めやすくなります。

よくある行き違いは?

  • 1か所に断られただけで諦めてしまう:断る理由が「担当がいっぱい」なら、別の事業所では受けられる可能性があります。紹介を頼み、窓口にも相談してください。
  • 同時に何か所にも申し込んで、決まったあと連絡しない:複数への同時依頼が明らかな場合は、断る正当な理由の例に挙げられています。問い合わせは並行してよいですが、正式な依頼先が決まったら、ほかの事業所にも伝えてください。
  • 急ぐ理由を伝えていない:退院日や、一人暮らしで食事がとれていないことなどは、最初の電話で伝えてください。

この記事で確認できたこと

  • 居宅介護支援事業所は正当な理由なく断れないが、担当人数がいっぱい・実施地域外は正当な理由にあたる(運営基準第5条、解釈通知)
  • 断る事業所には、ほかの事業所の紹介などの対応が求められている(同第6条)
  • 断られたら、紹介の依頼と、地域包括支援センター・市区町村への相談を同時に進める
  • 自己作成は最後の手段。届出と書類づくりを自分で担う前提で、まず市区町村に相談する