「掃除もお願いしたいけれど、これ以上回数を増やすと何か言われるのでは」——生活援助を中心に訪問介護を組んでいるご家族から、こうした不安の声を聞くことがあります。実は、生活援助中心の訪問介護には「一定回数を超えると、ケアマネジャーが市区町村に届け出る」という制度が実在します。名前だけ聞くと身構えてしまいますが、この制度の目的は利用を制限することではありません。
先に、要点をまとめます。
- 生活援助中心型の訪問介護が月に一定回数(要介護度ごとに国が定めた基準回数)以上になるケアプランは、ケアマネジャーが市区町村へ届け出る仕組みが2018年10月から実施されています。基準回数は要介護1で27回、要介護2で34回、要介護3で43回、要介護4で38回、要介護5で31回です。
- 届け出の目的は「利用を減らさせる」ことではなく、多職種でケアプランの内容を検証し、より本人の自立に合った支援になっているかを確認することです。届け出=ペナルティではありません。
- 届け出が必要になっても、ケアプラン自体に訪問介護が必要な理由がきちんと記載されていれば、そのままサービスを継続できます。
ただし一つだけ、後半で必ず触れておきたい注意点があります。基準回数はあくまで「届け出が必要になる目安」であり、超えた瞬間にサービスが打ち切られる上限ではありません。 この違いを混同すると、必要な生活援助まで無理に減らしてしまうことがあります。詳しくは記事の後半で説明します。
生活援助の回数が多いと届け出が必要になる制度とは?
要介護度ごとに国(厚生労働大臣)が定めた基準回数以上、生活援助中心型の訪問介護を1か月のケアプランに位置づける場合、ケアマネジャーがその居宅サービス計画を市区町村(保険者)へ届け出る義務がある制度です。
この制度は2018年(平成30年)10月の運用開始から続いているもので、2026年度の報酬改定においても、この届出制度自体が廃止・変更されたという発表は確認されていません。背景にあるのは、生活援助が中心のサービス利用が全国平均から統計的にかけ離れて多い場合、利用者の自立支援や重度化防止、地域資源の有効活用の観点から、市区町村がケアプランの内容を確認し、必要であれば是正を促すことが適当だという考え方です。
基準回数は要介護度によって次のように定められています。
| 要介護度 | 基準回数(1か月あたり) |
|---|---|
| 要介護1 | 27回 |
| 要介護2 | 34回 |
| 要介護3 | 43回 |
| 要介護4 | 38回 |
| 要介護5 | 31回 |
見ての通り、要介護度が上がるほど基準回数も単純に増えるわけではありません(要介護3が43回で最多、要介護4・5はそれより少ない)。これは生活援助が中心のケアプランの実態的な分布から統計的に定められた数字であり、「重い介護度ほど生活援助をたくさん使ってよい」という単純な比例関係ではないことを示しています。
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届け出は「利用を減らされる」という意味なのか?
いいえ、届け出はサービスの利用を制限したり中止させたりするための手続きではありません。市区町村がケアプランの内容を確認し、必要な支援として妥当かどうかを多職種で検証するための仕組みです。
「市区町村に届け出る」と聞くと、行政から利用を止められるのではと不安になる方が多いのですが、制度の趣旨はあくまで検証と是正の促しです。届け出を受けた市区町村は、ケアマネジャーに出席してもらう検討会議(自治体によって「自立支援ケア検討会議」などの名称)を開催し、そのケアプランについて多職種の視点で内容を確認します。
このとき重要なのが、ケアプランに訪問介護が必要な理由がきちんと記載されているかです。例えば「本人が一人暮らしで、身体機能の低下により掃除・調理・洗濯のいずれも自力では困難」「同居家族はいるが就労等により日中不在で家事を担えない」といった具体的な理由が記録されていれば、基準回数を超えていても、その必要性が認められてそのまま継続できるケースがほとんどです。
検証の結果、もし今の内容が本人の自立支援にそぐわないと判断された場合は、ケアマネジャーを通じて代替の支援方法(他のサービスとの組み合わせ、家事の一部を見直す等)が提案されることがあります。これも「一方的に打ち切る」のではなく、より本人に合った形を一緒に探すという位置づけです。
基準回数を超えそうなとき、家族は何をすればいい?
まずはケアマネジャーに「なぜその回数が必要なのか」を一緒に言語化してもらうことが最も重要です。届け出を怖がって必要な生活援助を自己判断で削る必要はありません。
基準回数に近づいている、あるいは超えそうだと分かったときに、家族としてできることを整理すると次のようになります。
- 本人の状態と必要性を具体的に振り返る: 「一人暮らしで買い物に行く体力がない」「認知症の症状で調理の火の管理が難しい」など、なぜその回数の生活援助が必要なのかを、日々の生活場面に沿って言葉にしておきます。ケアマネジャーがケアプランに記載する「必要な理由」の材料になります。
- 届け出自体を過度に心配しない: 届け出は全国で一定数発生している通常の事務手続きであり、届け出されること自体が「悪いケアプラン」を意味するわけではありません。
- 検討会議の結果を待つ間もサービスは継続される: 届け出をしてから検討会議が開かれるまでの間も、既存のケアプランに基づくサービス提供は通常どおり続きます。急にサービスが止まる制度ではありません。
- 見直しの提案があった場合は、代替案を一緒に検討する: もし多職種検証の結果、他のサービスとの組み合わせなどが提案された場合は、家族の状況(就労・体調・他のきょうだいの関与など)を伝えたうえで、無理のない形を相談します。
区分支給限度額の消費ペースが気になってきた場合の考え方は訪問介護の利用限度額、そろそろ超えそう。ケアプランを見直す前に確認したい3つのこと、区分支給限度額そのものの仕組みは区分支給限度額と訪問介護の使える範囲で詳しく説明しています。
基準回数と区分支給限度額は同じもの?
いいえ、別の仕組みです。区分支給限度額は「1か月に使える介護保険サービスの上限額(お金の枠)」、基準回数の届け出制度は「生活援助中心型の訪問介護の回数が統計的に多い場合に検証する仕組み(回数のチェック)」で、目的も判定基準も異なります。
この2つを混同すると、「限度額に余裕があるから生活援助を増やしても大丈夫」「基準回数を超えたら限度額もオーバーする」といった誤解が生まれがちです。整理すると次のようになります。
| 区分支給限度額 | 基準回数の届け出制度 |
|---|---|
| 何をチェックするか | 1か月に利用できる保険サービスの合計額(単位数) |
| 超えるとどうなるか | 超過分は原則全額自己負担になる |
| 対象範囲 | すべての介護保険サービスの合計 |
| 「超える」ことの意味 | 家計への負担が増える |
つまり、限度額に余裕があっても基準回数を超えれば届け出は必要になりますし、逆に基準回数以内であっても限度額いっぱいまで使えば自己負担は増えます。両方は別々の物差しなので、それぞれ独立して確認する必要があるという点を押さえておくと、ケアマネジャーとの相談がスムーズになります。
ケアマネジャーから回数について指摘されたら、どう伝えればいい?
「回数を減らしてほしい」という意味だと決めつけず、まずは何が確認されているのかを具体的に聞き返すことが大切です。そのうえで、本人の生活実態を一つずつ言葉にして伝えます。
ケアマネジャーから「回数が基準を超えそうなので、理由を整理させてください」と言われたとき、家族が身構えてしまうことがあります。ですが、これはケアマネジャー自身が担当する届け出業務の一環であることがほとんどで、家族を責めているわけではありません。
伝えるとスムーズな情報を整理すると、次のようになります。
| 伝える情報 | 具体例 |
|---|---|
| 本人が自分でできないこと | 「立ち上がりが不安定で掃除機がかけられない」「火の管理が心配で調理を任せられない」 |
| 家族の関与状況 | 就労時間、同居の有無、遠方に住んでいる場合の頻度 |
| これまでの経過 | 状態がいつ頃からどう変化してきたか |
| 他の代替手段の有無 | 家事代行や配食サービスなど、保険外の手段をすでに使っているか |
ケアマネジャーとの役割分担の考え方全体はケアマネジャーと訪問介護事業所の役割分担にまとめています。回数の見直しに関する相談は、時間区分の見直し(訪問介護の「時間区分」で料金はどう変わる?)と合わせて検討されることも多いので、あわせて確認しておくと相談の材料が増えます。
まとめ|今日からできること
この記事を読んで、次のことが判断できるようになったはずです。生活援助の回数が基準を超えても届け出は「利用制限」ではなく「検証の仕組み」であること、基準回数(要介護1=27回〜要介護5=31回)と区分支給限度額はまったく別の物差しであること、そして届け出の話が出たときに何を伝えればよいか——この3点です。
まずは今日、今月のケアプランに位置づけられている生活援助の回数を、利用票(サービス提供票)で一度確認してみてください。基準回数に近い・超えているとしても、それ自体は問題ではありません。「なぜその回数が必要か」を言葉にできる状態にしておくことが、次にケアマネジャーと話すときの安心材料になります。
事業所を比較しながら検討したい場合は、介護ほうもんさーちの検索ページから、対応エリアやサービス内容を条件で絞り込んで探すこともできます。焦らず、本人の生活実態に沿って一つずつ確認していただければと思います。

