訪問介護事業所が発信する「対応エリア」は、思いつきで決めてよいものではなく、指定居宅サービス等の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号。以下「運営基準」)に基づき、事業所ごとに定める運営規程の記載事項のひとつ「通常の事業の実施地域」が土台になります。運営規程には他にも事業の目的・運営方針、従業者の職務内容・体制、利用料等の額、営業日・営業時間、利用定員、苦情対応の方法などが並びますが、対応エリアの発信を考えるうえでまず押さえるべきはこの「通常の事業の実施地域」という言葉そのものです。
運営基準の解釈通知(老企第25号)は、この地域について「客観的にその区域が特定されるものとすること」、そして「利用申込に係る調整等の観点からの目安であり、当該地域を越えてサービスが行われることを妨げるものではない」としています。つまり「通常の事業の実施地域」は、事業所が対応する目安の範囲であって、そこから一歩でも外れたら一律に提供不可という絶対的な境界線ではありません。この解釈を誤解し、実施地域外からの問い合わせを機械的に断ってしまうと、後述する「提供拒否の禁止」との関係で説明がつかなくなる場面も出てきます。
また、都道府県・指定都市・中核市は条例で指定居宅サービスの基準を独自に定められる仕組みがあり、実際に東京都や千葉市などで条例化されている例があります。したがって対応エリアの考え方や記載の細目は、国の基準だけでなく指定権者(都道府県・市区町村)の条例・要綱によって上乗せや解釈の違いがありうる点も忘れてはいけません。エリア設計を始める前に、まず「自法人の指定権者はどこか」「その指定権者独自のルールはあるか」を確認することが出発点になります。条文番号や解釈の詳細は、運営基準の原文(e-Gov法令検索)と指定権者の窓口で必ず確認してください。

