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訪問介護の交通費・実費の確認ポイント

Published
作成日: 2026年7月7日
Updated
最終更新日: 2026年7月8日

訪問介護で交通費や実費が発生する条件、事業所が請求できる範囲、重要事項説明書での確認ポイントを制度の一次情報に基づいて整理し、事業所・ケアマネジャーへの具体的な確認手順までやさしく解説します。

01訪問介護で「実費」が発生するのはどんなときか(全体像)

訪問介護を利用していると、介護保険が給付するサービス費のほかに、利用者が自己負担で支払う「実費」が話題になることがあります。代表的なものが交通費です。訪問介護の基本的な仕組みでは、ヘルパーが自宅を訪問して行う身体介護・生活援助などのサービス費は介護保険から給付され、利用者は所定の自己負担割合(1〜3割)を支払います。これに対し、交通費のように保険給付の対象に含まれない費用は、一定の条件のもとで事業所が利用者から実費として別途受け取ることが認められています。

ただし「一定の条件」がポイントです。運営基準(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準=平成11年厚生省令第37号)では、交通費を利用者から受け取れる場面を限定しており、どんな訪問でも自由に交通費を上乗せできるわけではありません。またこの記事で扱うのは、要介護1〜5の方が利用する訪問介護を中心とした内容です。要支援の方向けの「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」の訪問型サービスは市区町村ごとに基準が異なり、障害福祉制度である重度訪問介護とも仕組みが別物です。この違いは記事の後半で改めて整理します。

事業所探しやケアマネジャーへの相談の段階では、「交通費がかかるのか、かかるとしたらどんな時か」「重要事項説明書にどう書かれているか」を確認することが、後々の請求トラブルを避ける一番の近道になります。次章以降で、条件と確認の仕方を具体的に見ていきます。

身体介護・生活援助などの介護保険給付部分と、通常の実施地域外への交通費や身の回り品費などの実費部分が別建てになる仕組みを示す図

02交通費が実費になる条件:「通常の事業の実施地域」とは

運営基準第20条第3項は、指定訪問介護事業者が「利用者の選定により、通常の事業の実施地域以外の地域の居宅において指定訪問介護を行う場合」に、それに要した交通費の支払いを利用者から受けることができると定めています。つまり交通費が実費として認められるのは、あくまで事業所が定める「通常の事業の実施地域」の外に訪問する場合に限られるというのが基準の建て付けです。

ここで重要になるのが「通常の事業の実施地域」という言葉です。解釈通知(老企第25号)では、この地域は事業所ごとに客観的に区域が特定されるべきものとされています。あくまで利用申込の調整などの目安であり、この地域を越えてサービスを提供すること自体を妨げるものではない、という位置づけです。つまり「実施地域」は事業所が運営規程で定める区域であり、全国一律の基準や距離が決まっているわけではありません。

逆にいえば、自宅が「通常の事業の実施地域」の内側にあれば、原則として交通費は基本のサービス費に含まれ、別立てで請求されることはないと考えられます。自分の家がその事業所の実施地域の内側か外側かは、パンフレットだけでは分からないことも多いため、事業所やケアマネジャーに「うちは実施地域の中ですか、外ですか」と具体的に尋ねるのが確実です。実施地域は事業所の運営規程に明記される事項なので、質問すれば書面で確認できるはずです。

03交通費以外に実費になり得るもの(その他日常生活費の考え方)

介護保険制度には、交通費以外にも利用者が実費で負担する費用の考え方があります。通所介護(デイサービス)などについて定めた解釈通知(平成12年老企第54号)では、「その他の日常生活費」として、身の回り品費や教養娯楽費など、利用者が個人的に選択して受ける便宜にかかる費用は実費徴収が認められるとされています。一方で、内容や理由があいまいな「お世話料」「管理協力費」といった名目や、本来保険給付に含まれるはずのおむつ代、共用設備の使用料などを実費として徴収することは認められません。

この通知は通所系サービスを対象にしたものであり、訪問介護に直接そのまま当てはまるわけではありません。ただし「保険給付と明確に区分されないあいまいな名目での費用徴収は認められない」という考え方は、老企第25号でも訪問介護について同様に示されている共通の原則です。つまり、訪問介護で交通費以外の名目の実費を求められた場合も、「何のための費用か」「保険給付に含まれる内容と重複していないか」を確認する視点は変わりません。

事業所探しの段階では、重要事項説明書やパンフレットに「実費」として記載されている項目があれば、それぞれ何を指すのか、金額の根拠は何かを具体的に聞いておくと安心です。曖昧な説明しか得られない場合は、契約前にケアマネジャーに相談し、内容を一緒に確認してもらうとよいでしょう。

確認の実務としては、重要事項説明書に「実費」「その他費用」といった欄がある場合、そこに列挙された項目を一つずつ「これは何のための費用ですか」「保険給付のサービス費と重複していませんか」と尋ねていく方法が有効です。例えば「サービス提供時に使う手袋やエプロン等の消耗品費」のように、実際に利用者のために個別に消費される物品の実費であれば説明がつきやすい一方、名目だけで内容の説明が曖昧な項目は、契約前に書面での明確化を求めてよい部分です。見落とされやすいのは、契約時の重要事項説明書には記載がなくても、後から「オプション」「追加サービス」といった名目で実費が案内されるケースです。契約後に費用項目が増える場合も、事前説明と同意が必要という原則は変わらないため、追加の実費案内を受けたら、その都度「重要事項説明書のどの項目に対応するものか」を確認する習慣を持つと安心です。

04実費を請求される前に確認すべき手続き(重要事項説明書・同意)

訪問介護事業所には、サービス開始前に行うべき手続きが運営基準で定められています。第8条では、指定訪問介護事業者はサービス提供の開始に際し、あらかじめ利用申込者またはその家族に対して、運営規程の概要など重要事項を記載した文書(いわゆる重要事項説明書)を交付し、説明したうえで同意を得なければならないとされています。交通費についても第20条第4項が「あらかじめ利用者又はその家族に対しサービスの内容及び費用について説明を行い、利用者の同意を得なければならない」と定めており、事前説明と同意の取得は交通費請求の前提条件です。

これらの規定を踏まえると、契約前の説明の場では、重要事項説明書の中に交通費に関する項目があるかどうかを具体的に確認することが実務上の要点になります。「交通費は発生しますか」「発生するとしたらどんな条件で、いくらくらいですか」「計算方法(距離に応じてか、地域外なら一律かなど)はどうなっていますか」といった質問を、契約前の面談やケアマネジャーとの打ち合わせの場で投げかけておくと安心です。

もし契約後に、事前の説明を受けていなかった交通費や実費を請求された場合は、まず事業所に説明を求め、重要事項説明書や契約書にその項目が明記されているかを確認してください。明記も説明もないまま請求されている場合は、運営基準が求める手続きが十分でない可能性があるため、担当のケアマネジャーや地域包括支援センター、市区町村の介護保険担当窓口に相談することをおすすめします。

05中山間地域・特別地域に住んでいる場合の加算と交通費の関係

山間部や離島など、事業所からの移動に時間や距離がかかる地域に住んでいる場合、交通費の扱いがどうなるのか気になる方も多いと思います。介護報酬には「中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算」という仕組みがあり、訪問介護を含む複数のサービスが対象になっています。この加算を事業所が算定している場合、その対象となる交通費相当分を、加算とは別に利用者から徴収することはできない関係にあるとされています。つまり、加算が算定されているにもかかわらず追加で交通費を請求されている場合は、二重取りになっていないか確認する価値があります。

また、事業所側の体制に関する加算として「特別地域加算」や「中山間地域等小規模事業所加算」もあります。これらは離島振興法・山村振興法・過疎地域に関する法律などで指定された地域に事業所が所在し、事前に体制を届け出ている場合に算定できるもので、利用者への交通費請求とは別建ての制度です。事業所がどの加算を算定しているか、それが自分への請求にどう影響するかは、事業所の説明資料だけでは分かりにくいことがあります。

お住まいの地域が対象地域にあたるか、事業所がどの加算を算定しているか、交通費の請求と加算算定が重複していないかは、事業所に直接尋ねるほか、市区町村の介護保険担当窓口に確認するのが確実です。「うちの地域は中山間地域等の加算対象ですか」「その場合、交通費は別途かかりますか」という聞き方をすると、話がかみ合いやすくなります。

06総合事業(要支援者等)を利用している場合の注意点

要支援1・2の認定を受けている方や、基本チェックリストで生活機能の低下が確認された方は、訪問介護(要介護1〜5向け)ではなく「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」の訪問型サービスを利用することがあります。総合事業は市区町村が主体となって運営する仕組みで、国のガイドラインを踏まえつつ、サービスの基準や単価、利用者負担の内容を市区町村ごとに設定しています。そのため、交通費や実費の扱いについても、全国一律のルールがあるわけではなく、自治体によって運用が異なる可能性があります。

ここで注意したいのは、「要介護の訪問介護で交通費がこう扱われているから、総合事業でも同じはずだ」と考えないことです。総合事業は制度の枠組み自体が要介護向けの訪問介護と異なるため、交通費の考え方も、そもそも交通費という名目があるのかどうかも含めて、お住まいの市区町村に確認する必要があります。

確認の窓口は、まず担当のケアマネジャーや地域包括支援センターです。総合事業の詳細は市区町村ごとの要綱・実施要領で定められているため、「総合事業の訪問型サービスを使う予定だが、交通費や実費はどう扱われるか」を、地域包括支援センターや市区町村の高齢福祉担当課に具体的に聞くのが確実な方法です。総合事業と訪問介護は名前が似ていても別の制度であることを、まず本人・家族が理解しておくことが第一歩になります。

また見落としやすい点として、認定更新のタイミングで要支援から要介護に区分が変わる、あるいはその逆になる場合、利用するサービスの制度区分自体が切り替わることがあります。区分が変われば、それまで確認していた交通費・実費の扱いがそのまま引き継がれるとは限りません。区分変更の連絡を受けたら、担当ケアマネジャーに「サービスの種類が変わることで、実費の扱いも変わるか」を改めて確認しておくと、切り替え時の思わぬ請求を避けやすくなります。

07保険外サービスと組み合わせる場合の実費(混合介護の考え方)

訪問介護の前後に、保険給付の対象にならない家事代行や付き添いなどを組み合わせて利用したいと考える家庭もあります。こうした介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する形は「混合介護」と呼ばれることがあります。この点について厚生労働省の通知(平成30年9月28日付)は、保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いを整理しています。

この通知によれば、事業者は保険外サービスの目的・運営方針・利用料等を、指定訪問介護事業所の運営規程とは別に定める必要があります。また訪問介護の会計と保険外サービスの会計は区分することが求められており、料金や記録を混同しない体制が前提です。利用者に対しては、保険外サービスの内容・提供時間・利用料等について説明し、同意を得ることが必要とされ、認知機能の低下がある方への配慮も求められています。加えて、契約の締結前後に、利用者の担当ケアマネジャーへサービスの内容や提供時間等を報告することも通知の中で求められています。

家族としては、保険外サービスを依頼する際に「この部分は保険適用外で、料金は別会計になる」という説明を受けているか、担当ケアマネジャーにその内容が伝わっているかを確認するとよいでしょう。混合介護は仕組みとして認められていますが、区分と説明・同意というルールを守って運用されているかどうかが、安心して利用できるかの分かれ目になります。

確認の場面で役立つ聞き方としては、「この訪問の中で、どこからどこまでが保険給付のサービスで、どこからが保険外になりますか」「保険外の部分の料金は、どの書面に書かれていますか」「保険外サービスを頼んだことは、ケアマネジャーに共有されますか」の3点が基本になります。特に、保険給付のサービス提供時間の枠内に保険外サービスがなし崩し的に混ざり込み、会計だけ別扱いになっているような説明があいまいなケースは、通知が求める区分・説明・同意の原則に照らして確認が必要です。契約書や重要事項説明書に保険外サービスの利用料や提供条件が明記されているか、その場で確認してから同意することをおすすめします。

08実費トラブルを防ぐために家族・本人が確認すべきチェックポイント

ここまで見てきた内容を踏まえ、事業所探しや契約前の面談で確認しておきたいポイントを整理します。第一に、重要事項説明書に交通費の有無と、発生する場合の算定方法(距離に応じた従量制か、地域外なら一律の金額かなど)が明記されているかどうかです。金額の相場は事業所によって設定が異なり、一次情報からは全国一律の基準を確認できないため、「うちの地域だと大体いくらですか」ではなく、「この事業所の重要事項説明書ではどう定められていますか」という聞き方で確認するのが実務的です。

第二に、「通常の事業の実施地域」がどこまでで、自宅がその内側にあるか外側にあるかです。実施地域の外であれば交通費が発生し得る一方、内側であれば原則発生しないという運営基準の考え方を踏まえ、事業所に「うちは実施地域の中に入っていますか」と具体的に確認してください。

第三に、お住まいの地域が中山間地域等サービス提供加算や特別地域加算の対象になっている場合、交通費の請求と加算算定が重複していないかです。加算を算定しているのに交通費も別途請求されている場合は、事業所に確認し、必要であれば市区町村にも相談してください。

第四に、総合事業や保険外サービスを組み合わせる場合は、それぞれ別の確認ルートがあることも忘れないでください。総合事業は市区町村、保険外サービスは会計区分と説明・同意の有無、というように確認先を整理しておくと、契約前の面談やケアマネジャーとの相談がスムーズに進みます。分からないことがあれば、契約を急がず、事業所・ケアマネジャー・市区町村のいずれかに具体的な質問として持ち込むことが、後々の安心につながります。

FAQ

このガイドのよくある質問

必ずではありません。運営基準では、事業所が定める「通常の事業の実施地域」の外に訪問する場合に限り、事業所が利用者から交通費の支払いを受けられるとされています。実施地域の内側であれば、原則として交通費は基本のサービス費に含まれ、別途請求されないと考えられます。自宅が実施地域の内側か外側かは事業所ごとに異なるため、契約前に事業所へ具体的に確認してください。
交通費の算定方法(距離に応じた従量制か、地域外なら一律の金額かなど)は事業所ごとに設定されており、公的に定められた統一単価は一次情報からは確認できません。金額や計算方法は事業所の重要事項説明書に明記されているはずなので、契約前にその内容を具体的に確認し、不明な点は事業所やケアマネジャーに質問することをおすすめします。
運営基準では、交通費の支払いを受けるにあたり事前に費用の説明を行い、利用者の同意を得ることが定められています。説明や同意のないまま請求されている場合は、まず事業所に重要事項説明書や契約書での記載を確認してください。それでも解消しない場合は、担当のケアマネジャーや地域包括支援センター、市区町村の介護保険担当窓口へ相談することをおすすめします。
同じとは限りません。総合事業の訪問型サービスは市区町村が基準や単価を独自に設定しており、交通費や実費の扱いも自治体によって異なる可能性があります。「要介護の訪問介護ではこうだったから」と考えず、担当のケアマネジャーや地域包括支援センター、市区町村の窓口に個別に確認してください。
一律に高くなるとは言い切れません。中山間地域等に居住する方へのサービス提供加算を事業所が算定している場合、その対象となる交通費相当分を加算とは別に利用者から徴収することはできないとされています。加算の算定状況によって交通費の請求内容が変わり得るため、お住まいの地域が対象かどうかを事業所や市区町村に確認するとよいでしょう。

Sources

参照・確認する一次情報

制度や費用は変更されることがあるため、公式情報と事業所の資料を確認しながら更新します。

  • 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第8条・第20条・第29条

    交通費の実費徴収要件(第20条第3項・第4項)、重要事項説明書の交付・同意(第8条)、運営規程の記載事項(第29条)を規定。e-Govで条文を確認済み

  • 介護保険サービスと保険外サービスを組み合わせて提供する場合の取扱いについて(平成30年9月28日通知)

    混合介護における運営規程の区分・会計区分・利用者への説明同意・ケアマネジャーへの報告義務を規定

  • 介護予防・日常生活支援総合事業ガイドライン(厚生労働省老健局振興課)

    総合事業の訪問型サービスが市区町村ごとに基準・単価・利用者負担を設定する枠組みを示す。最新版は厚生労働省サイトまたは市区町村窓口で確認

  • 指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について(老企第25号)/通所介護等における日常生活に要する費用の取扱いについて(老企第54号)

    老企第25号は「通常の事業の実施地域」の定義(客観的な区域特定・利用調整の目安)とあいまいな名目での費用徴収禁止の原則を、老企第54号は通所介護等における「その他の日常生活費」の取扱いを示す解釈通知。原文は厚生労働省・事業所・自治体を通じて確認

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