メインコンテンツにスキップ
介護ほうもんさーち
訪問介護を知る

家族への支援と訪問介護の線引き

Published
作成日: 2026年7月7日
Updated
最終更新日: 2026年7月8日

訪問介護で同居家族分の家事がなぜ生活援助として頼めないのか、老計第10号・老振第76号の考え方を整理します。同居家族がいても一律に不可ではない仕組みや、見守り的援助という選択肢、医行為との混同に注意する点もあわせて解説します。

01「家族への支援」がなぜ線引きの対象になるのか

訪問介護は介護保険法第8条第2項に基づき、要介護と認定された「本人」の日常生活上の世話を行う制度です。介護保険法施行規則第5条も、訪問介護における家事援助を「居宅要介護者が単身の世帯に属するため又はその同居している家族等の障害、疾病等のため、これらの者が自ら行うことが困難な家事」と定義しています。つまり制度の出発点は、あくまで本人(と、家事が難しい事情を抱える家族)の生活を支えることであり、家族の暮らし全般を代行するサービスではありません。

この前提を踏まえて、厚生省老人保健福祉局老人福祉計画課長通知「老計第10号」(平成12年3月17日)は、生活援助を「身体介護以外の訪問介護であって、掃除、洗濯、調理などの日常生活の援助であり、利用者が単身、家族が障害・疾病などのため、本人や家族が家事を行うことが困難な場合に行われるもの」と定義し、さらに「生活援助は、本人の代行的なサービスとして位置づけることができ、仮に、介護等を要する状態が解消されたとしたならば、本人が自身で行うことが基本となる行為である」と補足しています。つまり生活援助は「本人ができないことを代わりに行う」制度であり、家族の家事負担を丸ごと軽くするための制度ではない、という考え方が根底にあります。

この線引きは、限られた社会資源(保険財源とヘルパーの人員)を、本当に必要な人に届けるための仕組みでもあります。次節以降で、具体的に何が対象で何が対象外なのか、老計第10号・老振第76号に沿って見ていきます。

訪問介護は本人への身体介護・生活援助・見守り的援助が対象で、家族のみのための家事は原則対象外となることを示す図

02生活援助として頼めること・頼めないことの根拠(老計第10号・老振第76号)

生活援助の対象は、本人の日常生活に必要な掃除・洗濯・調理・買い物などの家事です。これらは老計第10号が示す「本人が自分で行うことが基本だが、困難なために代行してもらう行為」の範囲にあたります。

一方で、老振第76号(平成12年11月16日「指定訪問介護事業所の事業運営の取扱等について」)は、生活援助の範囲に含まれないと考えられる行為を具体的に列挙しています。1つ目は「主として家族の利便に供する行為」で、利用者以外の人の分の洗濯・調理・買い物・布団干し、利用者以外が主に使う部屋の掃除、来客対応(お茶や食事の手配)、自家用車の洗車などが該当します。2つ目は「日常生活の援助に該当しない行為」で、これはさらに(1)ヘルパーが行わなくても日常生活に支障が生じないもの(草むしり、花木の水やり、ペットの世話など)、(2)日常的な家事の範囲を超えるもの(家具・電気器具の移動や修繕、大掃除、窓ガラス磨き、床のワックスがけ、家屋の修理やペンキ塗り、植木の剪定、正月・節句など特別な手間をかける調理など)に分かれます。

これらが対象外とされる判断軸は一貫していて、「本人の日常生活に直接必要かどうか」です。家族のための家事や、日常の範囲を超える作業は、本人の生活維持に必須とは言えないため対象から外れる、という整理です。

実際に事業所やケアマネジャーに相談する際は、「これは老振第76号でいう対象外行為に当たりますか」と一次情報の名称を挙げて聞くと、根拠に基づいた説明を得やすくなります。個別の可否は必ず事業所・ケアマネジャーに確認してください。

03同居家族がいる場合の生活援助の考え方(誤解されやすいポイント)

「同居する家族がいると生活援助は一切使えない」と思い込んでいる方は少なくありませんが、これは正確ではありません。厚生省告示第19号(平成12年2月10日)や老企第36号(平成12年3月1日 第2の2(5)注3)は、生活援助中心型の算定要件について「利用者が一人暮らしであるか、又は家族等が障害・疾病等のため家事を行うことが困難な場合」と定めていますが、老企第36号はこれに加えて「障害・疾病がない場合であっても、同様のやむを得ない事情により家事が困難な場合」を含むとしています。具体例として、家族の長時間就労による日中不在、同居家族の介護拒否・介護放棄、家族の介護疲れによる共倒れのおそれなどが挙げられています。

さらに平成19年12月20日付の厚生労働省老健局の事務連絡では、同居家族がいる場合の生活援助について「一律機械的に不可としてはいけない」とされており、個別のアセスメント(本人・家族の状況の丁寧な聞き取りと評価)に基づいて判断することが求められています。

一方で、「これまでしたことがない」「仕事や育児で忙しい」「頼みにくい」といった理由だけでは、生活援助が認められにくいとされる整理もあります。つまり、同居家族がいても認められる余地はあるものの、無条件ではなく、家族の就労状況や健康状態、介護負担の実態を具体的に伝える必要がある、ということです。

この判断はケアマネジャー・事業所・市区町村が行うものです。家族だけで「うちは同居だから無理だろう」と決めつけず、まずはケアマネジャーに家庭の状況を具体的に伝え、相談してみることが大切です。

04見守り的援助という別の選択肢

「家族の代わりに家事をしてもらう」生活援助とは別に、「本人と一緒に家事を行いながら自立を支える」見守り的援助という考え方があります。老計第10号における「自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助」は、安全を確保しつつ常時介助できる状態で、利用者とヘルパーがともに日常生活動作を行うもので、生活援助ではなく身体介護として算定されます(平成30年老振発0330第2号による明確化)。

具体例として、利用者と一緒に行う掃除、洗濯物干し、調理、配膳、後片付け、シーツ交換、衣類整理などが挙げられています。単に「代わりにやってもらう」家事代行とは異なり、本人ができる部分は本人が行い、難しい部分をヘルパーが支えながら、日常生活動作の維持・向上を図る位置づけです。

この仕組みは、たとえば「本人はまだ体を動かせるが、一人では不安で転倒が心配」「認知症があり、声かけをしながらでないと家事の手順が進まない」といった場面で活用しやすいものです。また、家族が日中不在で付きっきりの介助が難しい時間帯に、本人の自立を保ちながら安全を確保する選択肢としても検討できます。

見守り的援助を使えるかどうか、また身体介護としてどのように位置づけられるかは、本人の状態やケアプランの内容によって変わります。「家事を代行してもらう生活援助」と「一緒に行う見守り的援助」のどちらが本人に合っているか、ケアマネジャーに相談し、ケアプラン上でどう位置づけられているかを確認しておくと安心です。

05医療的なケアとの混同に注意(医行為の線引き)

家族への支援を考えるとき、もう一つ誤解が生まれやすいのが「医療的なケア」との線引きです。平成17年7月26日付の厚生労働省医政局長通知(医政発第0726005号)は、医療機関以外の介護現場で判断に迷いやすい行為について、原則として医行為ではないと考えられるものを整理しました。医行為とは「医師の医学的判断及び技術をもってするのでなければ人体に危害を及ぼし、又は危害を及ぼすおそれのある行為を、反復継続する意思をもって行うこと」とされ、体温測定や血圧測定(自動・半自動の測定器を使う場合)、パルスオキシメーターの装着、軽微な傷の処置、皮膚への軟膏塗布や湿布貼付の介助などは、令和6年度老人保健健康増進等事業のガイドライン(2025年3月公表)でも原則として医行為に該当しない行為として整理されています。

一方、服薬に関しては「介助」と「管理」を区別する必要があります。同ガイドラインによれば、服薬等の介助が医行為に該当しないとされるには、(1)本人の容態が安定している、(2)副作用の危険性や投薬量調整のため医師・看護職員による連続的な経過観察が必要でない、(3)内用薬の誤嚥可能性など専門的配慮が必要でない、という3条件を満たし、あらかじめ薬袋等で区分された薬を、処方や服薬指導の内容どおりに使用を介助する場合に限られます。薬の量の調整や飲み合わせの判断といった「管理」は、この介助の範囲を超えるものです。

また、喀痰吸引や経管栄養の注入行為は原則として医行為であり、介護職員が行うには、社会福祉士及び介護福祉士法に基づく研修修了、認定特定行為業務従事者認定証の交付、事業所が登録特定行為事業者として登録していることの3要件をすべて満たす必要があります。「ヘルパーは医療行為が一切できない」「何でもできる」という単純な断定はどちらも誤りで、行為の種類と条件によって扱いが異なる点を理解しておくことが大切です。気になる医療的なケアがある場合は、事業所に「この行為はどの区分に当たるか」を具体的に確認しましょう。

06要支援・総合事業や重度訪問介護との制度の違いに注意

「家族への支援」を考える際は、そもそも本人が利用している制度が何かを確認しておくことも重要です。要介護1〜5と認定された方が使う訪問介護(介護給付)とは別に、要支援1・2や基本チェックリスト該当者(事業対象者)が利用する「介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)」の訪問型サービスがあります。総合事業は市町村が実施主体の地域支援事業であり、サービス内容や運営基準、利用料は全国一律ではなく、市区町村ごとに独自に設定されています。そのため、家族の家事支援に関するルールの詳細も、住んでいる市区町村によって異なる可能性があります。「うちの地域ではどうなっているか」は、必ず市区町村の窓口や地域包括支援センターに確認してください。

また、混同されやすいものに「重度訪問介護」があります。これは障害福祉制度(障害者総合支援法)に基づくサービスで、介護保険の訪問介護とは根拠法も対象者も異なります。重度の肢体不自由や重度の知的・精神障害があり、常時介護を要する方が対象で、家族への支援の考え方や利用できる範囲も介護保険の訪問介護とは別の基準で定められています。

家族から見ると「同じヘルパーに来てもらっている」という感覚でも、本人が利用しているのが訪問介護(介護保険)なのか、総合事業の訪問型サービスなのか、あるいは重度訪問介護(障害福祉)なのかによって、家族への支援に関するルールがまったく異なります。まずは本人がどの制度を使っているのかを担当のケアマネジャーや相談支援専門員に確認し、そのうえで「その制度における家族への支援の範囲」を尋ねるようにしましょう。

07線引きに迷ったときに確認する相手と伝え方

ここまで見てきたように、家族への支援と訪問介護の線引きには複数の判断軸があり、しかも同居家族の有無や個別事情によって結論が変わり得ます。「うちのケースはどうなるのか」を自己判断せず、次の3者に確認する習慣を持つことが安心につながります。

まずケアマネジャーです。ケアプラン全体を把握しているため、「なぜこの支援が生活援助に含まれる/含まれないのか」「見守り的援助として位置づけられないか」を、本人・家族の状況に照らして説明してもらえます。相談の際は「本人の状態」だけでなく、「家族の就労状況」「家族の健康状態」「介護負担の実態」を具体的に伝えることが、老企第36号がいう「同様のやむを得ない事情」に該当するかどうかの判断材料になります。

次に、実際にサービスを提供する事業所です。サービス提供責任者に「この行為は老振第76号でいう対象外行為に当たりますか」「見守り的援助として組み込めますか」といった形で、根拠を挙げて具体的に質問すると、事業所側も答えやすくなります。事業所ごとの解釈の違いが心配な場合は、複数の事業所に同じ質問をしてみるのも一つの方法です。

最後に、市区町村(介護保険担当窓口)です。特に総合事業を利用している場合や、事業所とケアマネジャーの見解が一致しない場合は、最終的な判断基準を持つ市区町村に確認するのが確実です。介護ほうもんさーちで事業所を探す際も、気になる点は問い合わせ時にまとめて質問しておくと、契約後のミスマッチを防ぎやすくなります。

08まとめ:線引きを知ることは家族を守ることでもある

家族への支援と訪問介護の線引きは、一見すると「これはダメ」「あれもダメ」という制限の集まりに見えるかもしれません。しかしその根底にあるのは、本人の自立支援を基本としながら、限りある社会資源(保険財源とヘルパーの人員)を本当に必要な人へ届けるという考え方です。老計第10号や老振第76号が「本人の日常生活に直接必要かどうか」という判断軸を示しているのも、そのためです。

同時に、同居家族がいるからといって一律に生活援助が使えないわけではなく、家族の就労状況や健康状態によっては認められる余地があること、見守り的援助という「一緒に行う」支援の選択肢があること、医療的なケアには行為ごとに細かな条件があることなど、誤解しやすいポイントも多くあります。これらを正しく理解しておくことは、いざという時に「なぜ頼めないのか」に納得し、「では何ができるのか」を前向きに探すための土台になります。

大切なのは、わからないことをそのままにせず、ケアマネジャー・事業所・市区町村に具体的に確認する姿勢です。家族の状況を丁寧に伝えることで、本人にとっても家族にとっても無理のない支援の形が見えてきます。介護ほうもんさーちでは、こうした確認をしながら事業所を探すための情報を提供しています。迷ったときは、まず身近な相談先に一歩踏み出してみてください。

FAQ

このガイドのよくある質問

一律に不可というわけではありません。厚生労働省老健局の事務連絡(平成19年12月20日)は、同居家族がいる場合の生活援助について「一律機械的に不可としてはいけない」としており、個別の事情を踏まえて判断することが求められています。老企第36号は、家族の長時間就労による日中不在や、介護疲れによる共倒れのおそれなど「やむを得ない事情」がある場合を挙げていますが、具体的に認められるかどうかは家庭ごとの事情によって異なります。まずはケアマネジャーに家族の就労状況や健康状態を具体的に伝えて相談してください。
老振第76号(平成12年11月16日)が、生活援助の範囲に含まれない行為として具体的に列挙しているためです。草むしりや花木の水やりは「ヘルパーが行わなくても日常生活に支障が生じない行為」、大掃除や窓ガラス磨きは「日常的な家事の範囲を超える行為」に分類されています。判断の軸は「本人の日常生活に直接必要かどうか」です。個別の可否は事業所・ケアマネジャーに確認してください。
老振第76号は「主として家族の利便に供する行為」として、利用者以外の方の分の洗濯・調理・買い物・布団干しなどを、生活援助の範囲に含まれない行為の例に挙げています。訪問介護はあくまで本人の日常生活を支える制度であるため、家族の分の家事は基本的に対象外とされています。ただし個別の状況による違いもあり得るため、詳細は事業所・ケアマネジャーへの確認が必要です。
令和6年度老人保健健康増進等事業のガイドラインによれば、服薬の「介助」は、本人の容態が安定し、専門的な経過観察や配慮が不要で、あらかじめ薬袋等で区分された薬を処方通りに使用を手伝う行為を指し、原則として医行為に該当しません。一方、薬の量の調整や飲み合わせの判断などの「管理」はこの範囲を超えます。ヘルパーに任せられる範囲は本人の状態によって異なるため、事業所や医師・薬剤師に確認することが必要です。
同じではない可能性があります。要介護1〜5の方が使う訪問介護は介護保険法に基づく全国共通の基準ですが、要支援1・2や事業対象者が使う介護予防・日常生活支援総合事業の訪問型サービスは、市町村が実施主体の地域支援事業であり、内容や基準は市区町村ごとに異なります。家族への支援に関する詳細ルールも地域差があるため、必ずお住まいの市区町村や地域包括支援センターに確認してください。

Sources

参照・確認する一次情報

制度や費用は変更されることがあるため、公式情報と事業所の資料を確認しながら更新します。

Related

あわせて読みたいガイド

FREE CONDITION CHECK

ガイドの内容をもとに、確認事項を整理できます

AIコンシェルジュは準備中です。 公開までは、検索での絞り込みと、各事業所ページからの問い合わせをご利用ください。

事業所を探す気になる事業所へ直接問い合わせ