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精神疾患のある方の訪問介護の確認ポイント|使える制度と相談先

Published
作成日: 2026年7月7日
Updated
最終更新日: 2026年7月8日

精神疾患があっても訪問介護の利用自体は妨げられませんが、年齢や要介護認定の有無によって使える制度の入り口が変わります。事業所探し・ケアマネジャー相談で確認したいポイントを整理して解説します。

01精神疾患がある方でも訪問介護は利用できるのか(結論と全体像)

結論として、精神疾患があることを理由に訪問介護の利用そのものが妨げられるわけではありません。指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第9条は、指定訪問介護事業者に対し、正当な理由なく訪問介護の提供を拒んではならないと定めています。正当な理由として想定されているのは、事業所の人員体制上どうしても対応しきれない場合や、利用申込者の居住地が通常の事業実施地域外である場合などであり、「精神疾患がある」ということ自体は正当な理由には当たりません。

ただし、実際にどの制度の訪問サービスを使えるかは、年齢や要介護認定の有無によって次のように分かれます。

  • 65歳以上で要介護認定(要介護1〜5)を受けている場合は、介護保険の訪問介護が対象になります
  • 40〜64歳の場合は、老化に伴う16種類の特定疾病に該当するときに限り介護保険の対象になり得ます(後述の通り、精神疾患そのものは特定疾病に含まれません)
  • 40歳未満の場合や、40〜64歳で特定疾病に該当しない場合は、障害者総合支援法に基づく居宅介護等の対象になり得ます

この記事では、こうした制度の入口の整理と、訪問介護でできること・できないことの基本、服薬や体調の波にまつわる確認ポイント、そして事業所探し・ケアマネジャー相談で実際に何を聞けばよいかまでを扱います。一方で、医療的な治療方針の判断、施設入居の是非、介護職の求人・転職といったテーマはこの記事の範囲外です。医療面の判断は必ず主治医に、施設入居の検討は別途ご相談ください。なお、記事内で扱う制度・要件・費用の考え方は変わることがあるため、実際の適用可否は必ず事業所・ケアマネジャー・市区町村の窓口へ確認してください。

02利用できる制度の入り口を整理する(介護保険・総合事業・障害福祉の違い)

訪問介護に類するサービスには、根拠となる法律が異なる複数の制度が存在します。まず自分(家族)がどの入口に該当しそうかを大まかに把握しておくと、相談先を選びやすくなります。

65歳以上で市区町村から要介護1〜5の認定を受けている方は、介護保険の訪問介護が利用できます。ホームヘルパーが自宅を訪問し、身体介護・生活援助などを提供する、全国共通の基準に基づくサービスです。

40〜64歳の方(介護保険の第2号被保険者)は、老化に伴う16種類の特定疾病に該当する場合に限り、介護保険の要介護認定を受けられます。特定疾病には初老期における認知症、脳血管疾患、パーキンソン病関連疾患などが含まれますが、統合失調症やうつ病といった精神疾患そのものは特定疾病の一覧には含まれません。そのため、40〜64歳で精神疾患のみを理由に介護保険の対象となることは想定しにくく、この点は事業所や市区町村窓口で必ず確認してください。

40歳未満の方は、そもそも介護保険の要介護認定の対象になりません。この場合や、40〜64歳で特定疾病に該当しない場合は、障害者総合支援法に基づく居宅介護等の障害福祉サービスが検討の対象になります。

また、要支援1・2の認定を受けている方については、介護保険の訪問介護ではなく、市区町村が運営する介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)の訪問型サービスが対象になります。総合事業の内容・基準は市区町村ごとに異なるため、該当する場合は必ず市区町村の窓口へ確認してください。どの入口に該当するかで相談先(介護保険担当課/障害福祉担当課/地域包括支援センター)が変わるため、まずここを押さえることが最初の一歩です。

年齢や認定状況によって、介護保険の訪問介護・総合事業の訪問型サービス・障害福祉サービスの居宅介護のいずれが入口になるかを示す制度の分岐図

03介護保険と障害福祉、どちらを使うのか(保険優先の原則と例外)

介護保険と障害福祉サービスの両方に相当するサービスがある場合、原則として介護保険サービスに係る保険給付を優先して利用することになっています(平成19年通知「障害者総合支援法に基づく自立支援給付と介護保険制度との適用関係等について」に基づく整理)。これは「保険優先の原則」と呼ばれる考え方です。

ただし、これは一律に介護保険を優先させるという意味ではありません。厚生労働省の資料では、申請者の個別の状況に応じて、必要な支援を介護保険サービスで受けられるかを市町村が判断するとされています。具体的には、区分支給限度基準額の制約などにより市町村が適当と認める支給量が介護保険サービスのみでは確保できないと認められる場合や、身近に利用可能な介護保険事業所がない、あるいは空きがない場合には、障害者総合支援法に基づくサービスを利用することも可能とされています。

また、同行援護・行動援護・自立訓練(生活訓練)・就労移行支援・就労継続支援など、そもそも介護保険サービスに相当するものがない障害福祉サービス固有のものについては、当該障害福祉サービスの給付を受けることができます。

さらに2018年からは「共生型サービス」という枠組みも設けられており、介護保険事業所が障害福祉サービスを、障害福祉事業所が介護保険サービスを、指定手続きの特例により提供しやすくする仕組みがあります。対象はホームヘルプ(訪問介護相当)・デイサービス(通所介護相当)・ショートステイ(短期入所生活介護相当)の3種別に限られます。

どちらの制度が実際に使えるか、どこまで支給量が認められるかは個々の状況で判断が分かれるため、断定はできません。市区町村の障害福祉担当課・介護保険担当課、ケアマネジャーまたは相談支援専門員に、早めに具体的な状況を伝えて確認することをおすすめします。

04訪問介護ができること・できないことの基本(老計第10号を軸に)

訪問介護で提供される支援の内容は、老計第10号(平成12年3月17日老計第10号「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」、平成30年3月30日老振発0330第2号による改正)が基準になっています。この通知では、訪問介護の行為が大きく「身体介護」と「生活援助」に区分されています。

身体介護は、食事・排泄・入浴などの介助のほか、平成30年改正で明確化された「自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助」も含まれます。見守り的援助とは、ヘルパーが手を出して代行するのではなく、本人と一緒に、あるいは側で見守りながら声をかけ、本人ができることを本人自身に行ってもらう関わり方を指します。

生活援助は、身体介護以外の訪問介護であって、掃除・洗濯・調理などの日常生活の援助を指し、利用者が単身であるか、家族が障害・疾病などのために家事を行うことが困難な場合に行われるものとされています。ただし、商品の販売や農作業といった生業の援助的な行為、直接本人の日常生活の援助に属しないと判断される行為は、生活援助の内容には含まれないとされています。同居家族分の家事・大掃除・ペットの世話・来客対応などが個別にどこまで含まれる/含まれないかは、老計第10号の考え方に照らして事業所・ケアマネジャーが個別に判断する事項であり、この記事では断定しません。

精神疾患がある場合に特有の「これはできる/できない」という一律の線引きが老計第10号に個別に定められているわけではありません。あくまで身体介護・生活援助という行為区分の中で、本人の状態やケアプランに沿って何を依頼できるかが決まります。個別の可否は、事業所やケアマネジャーへの確認が欠かせません。気分や意欲の波によって「その日にできること」が変わりやすい特性がある場合は、その点も含めて事前に共有しておくと、実際の支援内容のすり合わせがしやすくなります。

05服薬に関する確認ポイント(服薬介助と服薬管理の違い)

精神疾患のある方の在宅生活では、服薬に関する支援が気になる方が多いはずです。まず整理しておきたいのは、「服薬介助」と「服薬管理」は異なる概念だという点です。

老計第10号では、身体介護の一部として「服薬介助」が例示されています。具体的には、水の準備、配剤された薬をテーブルの上に出すこと、本人が薬を飲むのを手伝うこと、といった、直接的な介助行為です。一方で、見守り的援助の例としては「本人が自ら適切な服薬ができるよう、服薬時において、直接介助は行わずに、側で見守り、服薬を促す」という関わり方も明記されています。つまり、手を出して介助する場面と、見守りながら声かけで促す場面の両方が、訪問介護の枠組みの中に位置づけられています。

これに対して、残薬の確認や一包化の調整といった、医学的な判断や調剤を伴う「服薬管理」は、訪問介護のヘルパーが単独で担う役割ではなく、医師・薬剤師・看護職員が担う領域とされています。どこまでが介助・声かけの範囲で、どこからが医師・薬剤師による管理の領域なのかは、事業所・医師・薬剤師・ケアマネジャーへの確認が必要です。

また、精神科の薬は、自己判断で量やタイミングを変えることが体調に大きく影響する場合があるとされています。訪問介護の現場で気になる変化があった場合の連絡体制(誰に、どのタイミングで伝えるか)をあらかじめ事業所と取り決めておくと安心です。服薬に関する医療的な助言や薬の調整そのものは、必ず主治医・薬剤師に相談してください。

06医行為との線引きの基本的な考え方

「ヘルパーは医療行為ができない」という説明を耳にすることがありますが、これは単純に断定できるものではありません。平成17年医政局長通知(医政発第0726005号、平成17年7月26日「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」)は、医療機関以外の高齢者介護・障害者介護の現場で判断に迷いやすい行為のうち、原則として医行為ではないと考えられるものを列挙しています。体温測定、自動血圧測定器による血圧測定、パルスオキシメータの装着、軽微な切り傷・擦り傷・やけど等の専門的な判断や技術を要しない処置などが例として挙げられています。

また同通知は、皮膚への軟膏塗布、湿布の貼付、点眼薬の点眼、一包化された内用薬の内服、坐薬の挿入といった医薬品の使用介助についても、一定の条件を満たせば医行為に当たらないとしています。その条件とは、医師・歯科医師・看護職員が、患者の状態が「入院・入所して治療する必要がなく容態が安定していること」「副作用の危険性や投薬量の調整等のため、医師又は看護職員による連続的な容態の経過観察が必要な場合ではないこと」「内用薬については誤嚥の可能性、坐薬については肛門からの出血の可能性など、専門的な配慮が必要とされる状態でないこと」の3点を確認し、本人または家族に伝えている場合に限られます。この確認は医師・看護職員が行うものであり、ヘルパーや事業所が自己判断で行うものではありません。

重要なのは、同通知が「病状が不安定であること等により専門的な管理が必要な場合には、これらの行為であっても医行為とされる場合があり得る」としている点です。精神疾患のある方は体調の波によって状態評価が変わりやすい場合もあるため、「今、この行為をヘルパーに頼めるかどうか」は、サービス担当者会議などの場で医師・看護職員に確認することが前提になります。

なお、たんの吸引や経管栄養といった医療的ケアは、この通知が扱う範囲とは別に「喀痰吸引等制度」という独立した仕組みが設けられており、都道府県が実施する研修の修了、認定証の交付、事業所の登録という要件をすべて満たした場合に限って介護職員が行えるとされています。訪問介護のヘルパー資格があれば一律に対応できるものではないため、こうした医療的ケアが必要な場合は、対応可能な事業所かどうかを個別に確認する必要があります。個別の可否を事業所だけで判断せず、必ず医療職を交えて確認する姿勢が大切です。

07精神科訪問看護との違いと役割分担

訪問介護と混同されやすいサービスに、精神科訪問看護があります。両者は制度上の目的が異なります。訪問介護は、身体介護・生活援助といった生活面の支援を行うサービスです。一方、精神科訪問看護は、精神科を担当する医師が交付する精神科訪問看護指示書に基づき、看護師等が医療的な観点から症状の観察や療養上の支援を行うサービスです。

費用の面でも、精神科訪問看護は原則として医療保険が優先して適用される仕組みになっているとされています。ただし、対象者の状態によっては介護保険の給付対象になる場合もあるなど、優先関係には例外があります。どちらの保険が適用されるか、自己負担がどうなるかは個々の状況によって異なるため、断定はできません。医療機関・訪問看護ステーションまたはケアマネジャーに確認してください。

訪問介護と精神科訪問看護は、どちらか一方を選ぶものではなく、状態に応じて併用するケースもあります。ただし利用の申込経路が異なり、訪問看護は主治医の指示や地域の医療機関・精神保健福祉の窓口を通じて申し込むことが一般的です。訪問介護のようにケアプランの中で単純に組み込めるとは限らないため、「生活面の支援は訪問介護、医療的な観察・支援は精神科訪問看護」という役割分担を意識しつつ、実際にどう組み合わせるかはケアマネジャー・主治医・地域包括支援センター等に早めに相談することをおすすめします。

08体調に波がある場合・利用を断られないか不安なときの確認ポイント

精神疾患のある方やご家族から多く聞かれる不安のひとつが、「体調が不安定なことを理由にサービス提供を断られるのではないか」というものです。前述の通り、指定居宅サービス等基準第9条は、正当な理由なく指定訪問介護の提供を拒んではならないと定めています。正当な理由として認められるのは、事業所の現員体制で対応しきれない場合や、居住地が通常の事業実施地域外である場合などであり、精神疾患があること自体は正当な理由には当たりません。

とはいえ、実際の現場では「その日の体調によって対応内容や時間の調整が必要になる」という運用面の相談は起こり得ます。これは利用を拒否されるという話とは別に、あらかじめケアプラン作成時や事前の情報共有の場で、次のような点をすり合わせておくと安心です。

  • 気分の波・意欲の低下がある日にどこまで柔軟に対応してもらえるか
  • 体調不良で急に予定を変更したい場合の連絡方法と、その際の対応方針
  • ヘルパー交代時の情報引き継ぎの仕組み

こうした運用は事業所ごとに体制や実績が異なり、個々の事業所の対応可否を一般化して断定することはできません。契約前の相談段階で、事業所に率直に状態を伝え、対応可能な範囲を確認しておくことが、利用開始後のミスマッチを防ぐ近道です。

09事業所探し・ケアマネ相談で実際に確認したいことリスト

ここまでの制度の整理を踏まえ、実際に事業所を探す・ケアマネジャーに相談する場面で確認しておきたい点を整理します。

事業所への事前共有について

  • 精神疾患の診断名そのものを詳細に伝える必要はありませんが、日常生活でどのような支援が必要か、体調の波の出方、緊急時の連絡先はあらかじめ共有しておくと、当日の対応がスムーズになります
  • 「見守り的援助」としてどこまで本人のペースに合わせた関わりをしてもらえるか、事業所の考え方を確認しておく

服薬支援・体調変化時の連絡体制について

  • 服薬に関して依頼できるのは「介助・声かけ」の範囲であり、医学的な「管理」は医師・薬剤師の領域であることを踏まえ、異変時に誰へどう連絡してもらうかを取り決めておく
  • 主治医・訪問看護と事業所との情報共有の方法(連絡ノート、サービス担当者会議など)を確認する

医療機関・訪問看護との連携実績について

  • 精神科医療機関や訪問看護ステーションとの連携経験があるかは、事業所ごとに差があります。個別の評価を断定はできませんが、契約前の面談で「連携の実績や考え方」を尋ねてみることは有効です

相談窓口の活用について

  • どの制度(介護保険・総合事業・障害福祉)が対象になるか判断がつかない場合は、地域包括支援センター、市区町村の介護保険担当課・障害福祉担当課、精神保健福祉に関する相談窓口(保健所・精神保健福祉センター等)へ相談することから始めてください

最終的な制度適用や事業所ごとの対応可否は個々の状況で判断されるため、この記事の内容を出発点に、必ず事業所・ケアマネジャー・市区町村の窓口で最新情報を確認してください。

FAQ

このガイドのよくある質問

精神疾患があることを理由に訪問介護の利用が妨げられることはありません。指定居宅サービス等基準第9条は、正当な理由なく訪問介護の提供を拒んではならないと定めています。ただし65歳以上で要介護認定を受けているか、40〜64歳なら特定疾病に該当するか、それ以外なら障害福祉サービスの対象になるかで、実際に使える制度が変わります。どの制度が該当するかは市区町村やケアマネジャーへの確認が必要です。
訪問介護は掃除・調理・身体介助など生活面の支援、精神科訪問看護は医師の指示書に基づく医療的な観察・支援という違いがあります。精神科訪問看護は原則医療保険が優先されますが、対象者の状態によっては介護保険給付となる場合もあるなど例外もあります。両方を組み合わせて利用するケースもありますが、申込経路が異なるため、併用の可否や進め方はケアマネジャー・主治医に相談してください。
老計第10号上、水の準備や配剤された薬を出す、飲むのを手伝うといった「服薬介助」は身体介護の一部として例示されています。一方、残薬確認や一包化調整といった医学的な「服薬管理」は医師・薬剤師の領域です。どこまで介助・声かけとして依頼できるかは、事業所・医師・薬剤師・ケアマネジャーへの確認が必要です。
体調不良を理由に事業所側が一方的にサービス提供を拒否することは、正当な理由なく認められていません。ただし当日の対応内容や時間の調整が必要になる場面はあり得ます。気分の波がある日にどこまで柔軟に対応してもらえるか、連絡方法や引き継ぎの仕組みを、契約前やケアプラン作成時に事業所とすり合わせておくと安心です。
40歳未満は介護保険の要介護認定の対象にならないため、介護保険の訪問介護は利用できません。この場合は障害者総合支援法に基づく居宅介護等の障害福祉サービスが検討の対象になります。対象要件は市区町村や制度によって異なる可能性があるため、お住まいの市区町村の障害福祉担当課へ確認してください。

Sources

参照・確認する一次情報

制度や費用は変更されることがあるため、公式情報と事業所の資料を確認しながら更新します。

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