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在宅看取りを支える訪問介護の関わり方

Published
作成日: 2026年7月7日
Updated
最終更新日: 2026年7月8日

在宅で最期を迎える看取り期に訪問介護が担う役割を、身体介護・生活援助の内容や医療行為との境界、家族支援の視点から整理し、事業所やケアマネジャーへの確認ポイントまで具体的に解説します。

01在宅での看取りとは何か——訪問介護が関わる場面を知る

「看取り」とは、人生の最終段階を穏やかに過ごし、住み慣れた自宅で最期を迎えることを指す言葉として使われています。医療技術が進んだ現在でも、本人が「最期は自宅で過ごしたい」と望むケースは少なくなく、国も在宅医療・在宅介護を支える体制づくりを進めています。ただし、在宅での看取りは訪問介護(ホームヘルパー)だけで完結するものではありません。医療的な判断や病状管理は訪問診療の医師や訪問看護師が担い、訪問介護はそのなかで日常生活の支援と本人の安楽を支える役割を担うという分担があります。

この記事では、訪問介護が看取り期にどのような形で関わるのか、身体介護・生活援助としてできること、医療行為との境界線、家族の負担軽減における役割、そして利用できる制度の違いを整理します。あわせて、事業所探しやケアマネジャーへの相談の場面で実際に何を確認すればよいかも具体的にまとめました。

一方で、この記事で書かないこともあります。看取り期に必要な医療的判断(余命の見通しや治療方針など)は医師・看護師の専門領域であり、この記事では扱いません。また、費用の具体的な単位数や自己負担額、個別の事業所の評価・空き状況についても、本記事では断定的な記載を避けています。これらは制度改定や個々の状況によって変わるため、最新の情報は必ず事業所やケアマネジャー、市区町村の窓口に確認してください。看取りという場面は、本人にとっても家族にとっても心の負担が大きい時期です。まずは「訪問介護は看取りを支えるチームの一員である」という位置づけを理解することが、その後の相談をスムーズにする第一歩になります。

02看取り期の在宅ケアを支えるチームと訪問介護の位置づけ

在宅での看取りは、訪問介護だけでなく、医師(訪問診療)・訪問看護師・ケアマネジャー(介護支援専門員)・訪問介護のサービス提供責任者など、複数の専門職が連携するチームによって支えられます。厚生労働省の資料によれば、ケアマネジャーは要介護者の心身の状況に応じて居宅サービス計画(ケアプラン)を作成し、サービス事業者や市区町村との連絡調整を行う専門職と位置づけられています。看取り期には、本人の状態変化に応じてケアプランの内容を見直す頻度が上がりやすく、サービス担当者会議(ケアマネジャー・訪問看護師・訪問介護事業所などが集まる話し合いの場)が重要な役割を果たします。

訪問介護側では、サービス提供責任者が訪問介護計画の作成や、利用者の状態変化の把握、ケアマネジャーとの連携窓口を担うとされています。日々訪問するヘルパーが気づいた小さな変化(食欲低下、表情の変化、痛みの訴えなど)を、サービス提供責任者を通じてケアマネジャーや訪問看護師に伝える情報連携の流れが、看取り期には特に重要になります。

厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(2018年3月改訂)では、医療・ケア方針の決定は医師の判断だけでなく、医療・ケアチームによって慎重に判断することを原則としており、介護従事者もこのチームの一員として位置づけられています。事業所探しの段階では、「訪問看護や主治医とはどのように連携しているか」「サービス担当者会議にはどのくらいの頻度で参加しているか」を、ケアマネジャーや候補となる事業所に確認しておくと、看取り期に入ってからの連携イメージがつかみやすくなります。

本人・家族を中心に、訪問介護・訪問看護・訪問診療(医師)・ケアマネジャーが連携して在宅看取りを支える多職種連携図

03訪問介護(ヘルパー)が行える身体介護の内容

訪問介護の身体介護は、食事・排泄・清拭(体を拭いて清潔を保つこと)・体位変換(床ずれ予防などのため体の向きを変えること)・更衣(着替え)・入浴介助など、本人の体に直接触れて行う日常生活の援助が基本です。老計第10号(訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について)という国の通知が、身体介護・生活援助・通院等乗降介助というサービス行為の区分を示しており、訪問介護計画やケアプランを作成するときの指針になっています。

2018年度介護報酬改定にあわせた老計第10号の考え方の明確化では、「自立生活支援のための見守り的援助」に該当する行為例が7種類から15種類に拡大されました。これは、ヘルパーが単に代わりに家事をするのではなく、本人と一緒に行いながら見守り、声かけをする関わり方も身体介護として位置づけられていることを示しています。看取り期には、本人の体力や意識状態の変化に応じて、これまでできていた動作が難しくなったり、逆に安静を保つための介助が増えたりと、ケア内容の見直しが必要になる場面が増えていきます。

ただし、老計第10号はあくまで行為区分の考え方を示すものであり、個別の状況で「この行為を頼めるかどうか」は、本人の状態や事業所の判断によって変わり得ます。看取り期は特に体調の変化が大きいため、「今の状態でこの介助は身体介護として対応してもらえるか」を、ケアプランを作成するケアマネジャーや、実際に訪問する事業所のサービス提供責任者に、都度確認することが実務上の進め方になります。事業所を探す段階でも、「状態変化が大きい時期の対応実績があるか」を尋ねてみるとよいでしょう。

04医療行為との境界——ヘルパーができること・できないこと

訪問介護と医療行為の境界線は、家族にとってわかりにくい部分です。平成17年の厚生労働省医政局長通知(医師法第17条等の解釈について)では、水銀体温計や電子体温計による腋下・耳式の体温測定、自動血圧測定器による血圧測定、専門的な判断を要しない軽微な処置などは、原則として医行為に該当しないと整理されています。ただし同じ通知には、「病状が不安定であること等により専門的な管理が必要な場合には、医行為に該当する場合もあり得る」という留保も付けられています。つまり、看取り期のように状態が変化しやすい時期は、平常時なら問題ない行為でも、医療職の判断が必要になる場合があるということです。

喀痰吸引(かくたんきゅういん、たんの吸引)や経管栄養については、社会福祉士及び介護福祉士法の改正により制度化されており、実施できるのは、都道府県知事等が実施する喀痰吸引等研修を修了して「認定特定行為業務従事者」の認定を受けた介護職員が、都道府県等に登録された「登録特定行為事業者」に勤務している場合に限られます。すべてのヘルパーが対応できるわけではなく、事業所の登録状況とヘルパー個人の研修修了状況の両方が条件になります。

服薬についても、あらかじめ一包化(1回分ごとに薬をまとめること)された薬を飲む介助と、薬を管理すること(残薬確認や飲み忘れ防止のための声かけなど)は、区別して考える必要があります。「ヘルパーは医療行為ができる/できない」と単純に断定することは避け、看取り期に必要な医療的ケアの範囲は、事業所・訪問看護師・主治医に個別に確認することが欠かせません。事業所探しの際は「医療職との連携体制」や「喀痰吸引等の対応可否」を具体的に質問することをおすすめします。

05生活援助でできること・できないこと(看取り期の生活面の支え)

生活援助は、本人の日常生活を支えるための家事援助全般(調理・洗濯・掃除・買い物など)を指し、身体介護とは区分されるサービス行為です。老計第10号は、生活援助が本人の生活の維持に必要な範囲の援助であるという考え方を示しており、同居家族の分の家事や、本来の日常生活の範囲を超える大掃除などは、この区分の外にあるとされています。ただし、個別にどこまでが対象になるかは、ケアプランの内容や事業所の方針によって幅があるため、断定はできません。

看取り期には、本人の食欲や体調の変化に応じて、生活援助の内容そのものが変わっていくことがあります。たとえば、食事量が減ってくれば調理の内容や量を見直す必要が出てきますし、外出が難しくなれば買い物の頼み方も変わってきます。こうした変化は、家族が気づいた時点でケアマネジャーに相談し、ケアプランの見直しにつなげていくという流れが基本になります。日々の暮らしの中の小さな変化を、誰にどう伝えるかをあらかじめ決めておくと、看取り期に入ってからの調整がスムーズになりやすいでしょう。

事業所探しやケアマネ相談の場面では、「本人の状態が変化したときに生活援助の内容をどのくらいの頻度で見直せるか」「調理の負担が増えたときの対応はどうなるか」を具体的に尋ねてみることをおすすめします。あわせて、生活援助はあくまで本人の日常生活のための援助であり、同居する家族の分の家事まで無条件に含まれるわけではないという基本の考え方も押さえておくと、相談のときに希望を伝えやすくなります。個別にどこまで対応してもらえるかは、本人の状態や家族の事情によっても変わるため、率直に事情を伝えることが大切です。生活援助で頼めること・頼めないことの詳しい考え方は、別記事「生活援助とは?頼める家事・頼めない家事」もあわせて参考にしてください。

06家族の心身の負担を支える訪問介護の役割

看取り期の在宅介護は、本人だけでなく、日々介護をする家族にとっても心身の負担が大きい時期です。訪問介護が定期的に入ることで、家族が休息を取れる時間を確保できるという側面(いわゆるレスパイトの視点)は、在宅介護を続けるうえで重要な意味を持ちます。夜通し付き添っている家族にとって、日中の一定時間をヘルパーに任せられることは、心身を保つための支えになり得ます。

また、ヘルパーが日々の訪問の中で気づいた本人の様子の変化(食欲、表情、痛みの訴えなど)を、家族に代わって観察し、ケアマネジャーや訪問看護師に伝える情報連携の役割も重要です。家族がすべての変化に気づき続けるのは難しく、複数の目で見守る体制があることで、状態変化への対応が早まる可能性があります。

一方で、ヘルパーの関わりは、断定的な医療的助言や病状の見通しについての説明を行う場面ではありません。家族の不安や戸惑いに寄り添い、話を聞く姿勢は大切にされていますが、医学的な判断が必要な内容は訪問看護師や主治医に確認する流れになります。また、看取り後の遺族支援(グリーフケア、死別の悲しみに向き合う心のケア)をどの専門職がどこまで担うかは事業所や地域の体制によって異なるため、対応の有無や窓口は訪問看護やケアマネジャーに個別に確認してください。家族自身の負担感や不安も、遠慮せずケアマネジャーやヘルパーに伝えてよいものです。ため込まずに早めに共有することが、看取り期を乗り越えるための土台になります。複数の訪問系サービスが関わる時期は、誰にどこまで相談してよいか分かりにくくなりがちですが、「まずはケアマネジャーに伝える」という窓口を決めておくだけでも、家族の心理的な負担は軽くなりやすいでしょう。

07利用できる制度の違いを正しく理解する

在宅で使える訪問系のサービスにはいくつかの制度があり、看取り期に何が使えるかは対象者の要介護度や年齢、状況によって異なります。基本となるのは介護保険の訪問介護で、要介護1〜5の認定を受けた方が対象です。ケアプランに基づき、身体介護や生活援助を組み合わせて利用します。

一方、要支援認定を受けている方が利用する介護予防・日常生活支援総合事業(総合事業)の訪問型サービスは、内容や基準が市区町村ごとに独自に定められています。看取りが必要になるような医療的ケアを伴う場面での対応可否は自治体や事業所によって差があり得るため、「要支援の認定でも看取り期の対応をお願いできるか」は、地域包括支援センターや市区町村の窓口、事業所へ個別に確認する必要があります。総合事業だから対応できない、とも、対応できる、とも一律には言えません。

また、重度訪問介護は障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスであり、介護保険の訪問介護とは根拠法も対象要件も異なる別の制度です。障害支援区分などの要件を満たす方が対象になるため、介護保険の訪問介護と混同しないよう注意が必要です。年齢や状態によっては、介護保険と障害福祉のどちらの制度が適用されるか、あるいは両方を組み合わせられるかが変わってくるため、この判断も自己判断は避け、ケアマネジャーや市区町村の窓口に確認することが大切です。制度の枠組みを正しく理解しておくことは、看取り期に慌てないための備えになります。事業所探しの段階でも、「介護保険の訪問介護なのか総合事業なのか」を最初に整理しておくと、その後の相談先や確認事項が明確になり、いざというときの対応もスムーズになりやすいでしょう。

08費用・加算の仕組みをどう確認すればよいか

看取り期の訪問介護にかかる費用についても、この記事では具体的な単位数や自己負担額を示すことはできません。介護報酬は制度改定のたびに見直されるため、最新の内容は必ず事業所やケアマネジャーに確認する必要があります。ここで押さえておきたいのは、費用の疑問は自己判断で済ませず、ケアプランに基づいて事業所・ケアマネジャーに確認する仕組みになっているということです。

確認の具体的な進め方としては、まずケアマネジャーに「看取り期に入った場合、訪問回数や内容が増えるとどのくらいの負担増になる見込みか」を相談することが出発点になります。そのうえで、契約を結ぶ事業所からは重要事項説明書(サービス内容・料金体系・キャンセル規定などを事前に説明する書類)を受け取り、加算(サービス内容や体制に応じて料金が変わる仕組み)がどのような場合に発生するのかを具体的に質問しておくと安心です。看取り期は訪問回数や時間帯が変わりやすいため、「深夜・早朝の訪問は可能か、その場合の扱いはどうなるか」もあわせて確認しておくとよいでしょう。

総合事業の訪問型サービスを利用している場合は、費用の仕組みが介護保険の訪問介護と異なることがあるため、市区町村の窓口が別途の確認先になります。「今の制度でどこまで対応できるか」「費用はどのように変わるか」は、いずれも一次情報を持つ窓口(事業所・ケアマネジャー・市区町村)に直接尋ねることが、後々のトラブルを避ける一番確実な方法です。介護報酬は数年おきに改定されるため、以前に聞いた内容がそのまま今も当てはまるとは限りません。看取り期が近づいてきたタイミングで、あらためて最新の内容を確認し直す姿勢が安心につながります。

09訪問介護事業所・ケアマネジャーに相談するときの準備

看取り期に向けて、事業所やケアマネジャーに相談する際にあらかじめ準備しておくとよいことがあります。まず大切なのは、本人が「どこで、どのように最期を迎えたいか」という意思を、できるだけ早い段階から繰り返し共有しておくことです。厚生労働省のガイドラインでも、本人の意思は変化しうるものとして、日頃から話し合いを重ねるACP(アドバンス・ケア・プランニング、今後の医療・ケアについて本人・家族・医療介護チームが繰り返し話し合う取り組み)の考え方が重視されています。話し合った内容は、その都度記録し、家族や医療・ケアチームで共有していくことが望ましいとされています。

相談をスムーズにするためには、現在の身体状況、服薬状況、かかりつけ医や訪問看護の利用状況などの情報を整理しておくことも役立ちます。これらをまとめておくと、ケアマネジャーが多職種と連携する際の材料になり、サービス担当者会議での話し合いも具体的になりやすいでしょう。

また、家族自身の体力的・精神的な負担感や、対応への不安も、遠慮せずケアマネジャーやヘルパーに伝えてよいことです。看取りは家族にとっても初めての経験であることが多く、疑問や戸惑いを言葉にすること自体が、適切な支援につながる第一歩になります。介護ほうもんさーちでは、こうした看取り期の相談に対応できそうな事業所を探す入り口として情報を整理していますが、個々の事業所の評価や空き状況、対応可否そのものを断定するものではありません。最終的な確認は、必ず事業所やケアマネジャーに直接行うようにしてください。

FAQ

このガイドのよくある質問

訪問介護単独では在宅看取りは完結しません。医療的な判断や病状管理は訪問診療の医師や訪問看護師が担い、訪問介護は身体介護・生活援助を通じて日常生活の支援と本人の安楽を支える役割です。実際にはケアマネジャーを中心に、医師・訪問看護師・訪問介護のサービス提供責任者が連携するチームで支える仕組みになっています。誰が何を担うかは個別の状況で異なるため、ケアマネジャーに確認しながら進めることが大切です。
体温測定や血圧測定など、平成17年の医政局長通知で原則医行為でないと整理された行為は、状態が安定していれば対応できる場合があります。ただし喀痰吸引や経管栄養は、研修を修了し認定を受けたヘルパーが、登録された事業所に勤務している場合に限られます。病状が不安定なときは医行為とされる場合もあるため、対応範囲は事業所・訪問看護師に個別に確認してください。
要支援の方が利用する介護予防・日常生活支援総合事業の訪問型サービスは、内容や基準が市区町村ごとに独自に定められています。看取りが必要になるような医療的ケアを伴う場面での対応可否は自治体や事業所によって差があり得るため、一律に「使える」「使えない」とは言えません。地域包括支援センターや市区町村の窓口、事業所へ個別に確認する必要があります。
看取り期は本人の状態変化に応じてケアプランの見直し頻度が上がりやすく、サービス担当者会議でケアマネジャー・訪問看護師・訪問介護事業所などが話し合う機会が増える傾向があります。相談の窓口は基本的にケアマネジャーです。食事量の変化や体調の変化に気づいたら、まずケアマネジャーに伝え、必要な支援内容を一緒に整理していく流れになります。
厚生労働省のガイドラインでは、本人の意思は変化しうるものとして、日頃から繰り返し話し合うACP(アドバンス・ケア・プランニング)の考え方が重視されています。決まったタイミングがあるわけではなく、体調が落ち着いている早い段階から少しずつ話し合いを始め、内容をその都度記録し家族・医療介護チームで共有していくことが望ましいとされています。

Sources

参照・確認する一次情報

制度や費用は変更されることがあるため、公式情報と事業所の資料を確認しながら更新します。

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