「デイサービスに行く日は増やせても、家の中の困りごとは減らない」——在宅で介護を続けているご家族から、そうした声をよく聞きます。デイサービスの回数を増やしてみたけれど、朝の身支度や夕食の準備で毎日追われている。逆に訪問介護ばかり増やしても、日中ひとりで過ごす時間の不安は消えない。どちらか一方を増やせば楽になるはずが、実際にはうまく噛み合わないことがあります。

先に、要点をまとめます。

  • デイサービスと訪問介護は「日中に外で過ごす支援」と「自宅での生活を支える支援」という、そもそも役割が違うサービスです。回数を増やす前に、どちらの支援が今の困りごとに合っているかを見極める必要があります。
  • 見直しのサインは「本人の状態変化」「家族の負担の変化」「サービス利用後に見えてきた抜け」の3つです。この3つのどれに当てはまるかで、増やすべきなのがデイサービスか訪問介護かが変わります。
  • 本人の状態に変化がなく、曜日や回数だけを組み替える場合は、ケアプランの「軽微な変更」として扱われ、区分変更申請のような大がかりな手続きは不要なことがほとんどです。

ただし、この見直しには一つ注意点があります。「デイサービスが嫌がられているから訪問介護に変える」というように、目先の困りごとだけで入れ替えると、本来デイサービスにしかできない役割まで失ってしまうことがあります。 どの役割を残し、どの役割を訪問介護に振り替えるのか——この判断軸については、記事の後半で具体的に説明します。

デイサービスと訪問介護、見直しが必要になるのはどんなとき?

見直しのサインは大きく3つです。①本人の状態が変わった、②家族の対応できる時間が変わった、③実際に使ってみて支援の「抜け」が見えてきた、のいずれかに当てはまったら、組み合わせを見直すタイミングです。

在宅介護のサービス計画(ケアプラン)は、一度決めたら固定するものではありません。厚生労働省の資料でも、ケアプランは利用者の心身の状況や環境の変化に応じて見直すことが前提とされています。実際に見直しが必要になる場面は、次のように整理できます。

  • 本人の状態が変わった: リハビリで歩けるようになった、逆に転倒が増えて目が離せなくなった、認知症の症状が進んで日中ひとりでの留守番が難しくなった、など。状態の変化は、デイサービスと訪問介護のどちらがより効果的かを変えます。
  • 家族の対応できる時間が変わった: 家族の就労状況が変わった、遠方に住む家族が交代で来られなくなった、家族自身の体調が悪くなった、など。この場合は「誰が」「いつ」対応できなくなったのかを具体的に洗い出す必要があります。
  • 使ってみて抜けが見えてきた: デイサービスの日は問題なくても、通所のない日の食事や掃除が回っていない。訪問介護で身の回りは整うが、日中ひとりで過ごす時間の孤立感や活動量の低下が気になる、など。計画段階では見えなかった隙間が、実際に生活してみて初めて分かることは珍しくありません。

3つのうちどれに当てはまるかを最初に整理しておくと、次の章で「デイサービスを増やすべきか、訪問介護を増やすべきか」を考えるときの土台になります。ご自身の状況を振り返って、今いちばん当てはまるものを一つ選んでみてください。

デイサービスを増やす?訪問介護を増やす?どう判断する

「日中の孤立・活動量・入浴」で困っているならデイサービス、「自宅での生活そのもの」で困っているなら訪問介護を増やす方向で検討します。両者は目的が違うため、単純にどちらか一方を厚くすれば解決するとは限りません。

デイサービス(通所介護)は、利用者が施設に通い、食事・入浴などの支援や機能訓練を日中の一定時間受けるサービスです。社会的孤立感の解消や心身機能の維持、家族の介護負担軽減を目的とすると位置づけられています。「外に出て」他者と関わりながら過ごす場、と捉えると分かりやすいでしょう。

一方、訪問介護は訪問介護員(ホームヘルパー)が自宅を訪れ、食事・排泄・入浴などの介助(身体介護)と、掃除・洗濯・買い物・調理などの生活支援(生活援助)を提供するサービスです。こちらは「自宅の中で」本人の生活そのものを支える役割を担います。両者の違いや基本的な組み合わせ方の考え方はデイサービスと訪問介護を併用する考え方で詳しく解説していますので、まずは制度としての位置づけを確認したい方はあわせてご覧ください。

この記事では一歩進んで、実際に「今の困りごとに対してどちらを厚くすべきか」を判断する視点を整理します。

今の困りごと合っているのはどちらか理由
日中ひとりで過ごす時間が長く、活動量が落ちているデイサービスを増やす外に出て他者と関わる場が、心身機能の維持と孤立感の解消に直結する
通所のない日の食事・洗濯・掃除が回っていない訪問介護(生活援助)を増やす自宅の中の生活を支えるのは訪問介護の役割
入浴に見守り・介助が必要だが自宅の浴室では対応しづらいデイサービスを増やす施設の入浴設備・人員体制のほうが安全に対応しやすい場面が多い
服薬確認や早朝・夕方の身支度でつまずいている訪問介護(身体介護)を増やす自宅での決まった時間の介助は訪問介護が担う領域
家族が就労で平日日中に対応できなくなった訪問介護を平日日中に配置家族が物理的に行けない時間帯を埋めるのが最優先

表を見て分かるとおり、「デイサービスの回数を増やせば安心」「訪問介護を増やせば家が片付く」という単純な足し算ではなく、今困っている場面がどちらの役割に該当するかを先に特定してから、その役割を担うサービスの量を調整するのが基本の考え方です。判断に迷う場合は、この表をそのままケアマネジャーとの相談の材料にしていただいて構いません。

区分支給限度基準額を超えずに組み替えるには?

区分支給限度基準額の範囲内であれば、サービスの回数・組み合わせを変えるだけの見直しは「軽微な変更」として扱われ、区分変更申請のような手続きは不要なことがほとんどです。

介護保険には要介護度ごとに月あたりの利用上限(区分支給限度基準額)が定められており、訪問介護とデイサービスはいずれもこの上限の対象です。厚生労働省は、複数のサービスを利用して限度額を超えた場合、どのサービスを超過扱いとするかはケアプラン作成時にケアマネジャーが調整できるとしています。つまり、「デイサービスを1回減らして訪問介護を1回増やす」といった組み替えは、多くの場合、限度額の枠内でのやり繰りとして扱えるということです。

見直しの手続きの重さは、変更の内容によって次のように分かれます。

  • 軽微な変更: 本人の状態そのものに変化がなく、サービスの曜日・回数を変更する程度であれば、厚生労働省の通知(介護保険最新情報)で「軽微な変更」の一つとして整理されており、ケアプラン自体を作り直す一連の手続きを省略できます。担当のケアマネジャーへの相談・記録の更新で対応できることが多いです。
  • ケアプランの見直し: 本人の状態変化や家族状況の変化を踏まえて支援の方向性そのものを変える場合は、担当者会議を開き直し、ケアプランを作成し直す形になります。前章の「①本人の状態が変わった」に当てはまるときは、まずこちらに該当しないかをケアマネジャーに確認してもらう流れになります。
  • 区分変更申請: 要介護度そのものが実態に合わなくなった(状態が重くなった、あるいは軽くなった)と考えられる場合は、区分支給限度基準額自体を見直すため、市区町村に要介護度の区分変更を申請する手続きが必要です。

多くのご家庭が想像するより、実際の見直しは「軽微な変更」の範囲で収まることが少なくありません。「手続きが大変そうだから」という理由だけで見直しを先延ばしにする必要はない、とまずお伝えしておきます。ただし、限度額の上限に近い利用をしている場合は、組み替えによって自己負担額が変わることもあるため、変更前にケアマネジャーへ確認しておくと安心です。料金の仕組み全体については訪問介護の料金の仕組みと自己負担の考え方、限度額の詳細は区分支給限度額と訪問介護の使える範囲にまとめています。

見直しの判断から実際の変更までの流れを図にまとめました。

本人の状態変化・家族の負担変化・利用後の抜けの発見という3つのきっかけから、困りごとの特定、ケアマネジャーへの相談、軽微な変更かケアプラン見直しかの判断、実施という流れを示した図

ケアマネジャーにはどう伝えればいい?

「困っている場面」を時間帯・曜日単位で具体的に伝えることが、的確な組み替え提案を引き出す近道です。「大変です」だけでは、ケアマネジャーも何を増減すべきか判断できません。

見直しの相談で起きがちなのが、「なんとなく大変」という漠然とした伝え方です。ケアマネジャーは専門家ですが、実際の生活の様子を毎日見ているわけではないため、具体的な場面を伝えてもらわないと的確な提案がしづらくなります。相談前に、次のような点を整理しておくと話がスムーズです。

  • いつ困っているか: 平日か週末か、朝か夕方か夜か。曜日・時間帯で具体的に
  • 何が困っているか: 食事の準備ができない、入浴の見守りが不安、日中の様子が分からず心配、など場面で
  • 今のサービス利用状況で何が変わったか: デイサービスに行きたがらなくなった、訪問の時間だけでは足りなくなった、など変化点
  • 家族側の事情: 就労状況・体調・他の家族の予定など、対応できる時間帯の変化

これらを整理してケアマネジャーに伝えると、「デイサービスを週2回から3回に増やしましょう」「訪問介護の生活援助を火曜と金曜に追加しましょう」といった、具体的な組み替え案につながりやすくなります。担当者会議の場では、変更後にどの時間帯の困りごとが解消される見込みかも一緒に確認しておくと、後から「思っていたのと違った」というズレを防げます。

なお、デイサービス以外にも、訪問看護や福祉用具のレンタルなど組み合わせられるサービスは複数あります。デイサービス以外との併用も含めた全体像は訪問看護・デイ・福祉用具との併用で確認できます。また、働きながら介護をされている方は、平日日中の時間帯の埋め方について仕事と介護の両立|辞めずに続けるための訪問介護の組み立て方と制度の使い方もあわせて参考にしてください。

見直しでよくある失敗パターンとは?

「本人が嫌がった」「たまたま体調を崩した」といった一時的な出来事だけを理由に組み替えると、しばらくして別の困りごとが出てきて、また見直すことになりがちです。見直しの前に、一時的な要因か継続的な変化かを切り分けることが失敗を避ける鍵になります。

見直しの相談でよく起きる失敗には、いくつか共通したパターンがあります。あらかじめ知っておくと、同じつまずきを避けやすくなります。

  • 「デイサービスを嫌がった」=訪問介護に全部切り替える、という判断: 本人が一時的にデイサービスを渋った日があっただけなのに、通所そのものをやめて訪問介護に全振りしてしまうケースです。渋った理由が「その日の体調」「特定の職員との相性」など一過性のものであれば、通所自体をやめる必要はなく、事業所への相談やスタッフの配置換えで解決することもあります。デイサービスをやめると、他者との関わりや機能訓練の機会も同時に失われる点を忘れないようにしてください。
  • 家族の一時的な繁忙期に合わせて大きく組み替えてしまう: 決算期や繁忙期など、数週間だけ対応が難しい時期に合わせてケアプラン自体を作り直すと、繁忙期が終わったあとに「今度は使いすぎている」状態になり、また調整が必要になります。一時的な事情であれば、前述の「軽微な変更」の範囲で回数だけ一時的に増減させ、落ち着いたら元に戻す方が手間が少なく済みます。
  • 本人の希望だけ、家族の都合だけで決めてしまう: 本人が「家にいたい」と言えば訪問介護中心に、家族が「日中は預かってほしい」と言えばデイサービス中心に、と一方の意見だけで組み替えると、もう一方の困りごとが放置されたままになります。前章の表で示したように、困りごとの場面ごとに合っているサービスを特定したうえで、本人・家族双方の意向をケアマネジャーに伝えるのが遠回りに見えて確実です。
  • 「様子を見よう」で先延ばしにし続ける: 手続きへの心理的なハードルから、明らかに支援が足りていない状態を数か月放置してしまうケースもあります。状態の変化を伴わない曜日・回数の調整であれば「軽微な変更」で済み、大がかりな手続きにはなりません。困りごとが2〜3週間続いているなら、まず担当のケアマネジャーに一度連絡してみることをおすすめします。

これらの失敗に共通するのは、「今起きている困りごとが一時的なものか、続きそうなものか」を見極めないまま、感情や目先の出来事だけで組み替えを決めてしまうことです。見直しの前に一度立ち止まり、この記事の前半で整理した「本人の状態変化」「家族の負担変化」「利用後の抜け」のどれに当てはまるかを確認すると、こうした失敗を避けやすくなります。

見直してもうまくいかないときは?

組み替えを試しても状況が改善しない場合は、区分支給限度基準額そのものが実態に合っていない(=要介護度の見直しが必要な)可能性と、在宅での対応自体が限界に近づいている可能性の両方を検討する時期です。

見直しを1〜2回試しても「まだ足りない」と感じる場合、原因は大きく2つに分かれます。

1つ目は、限度額の枠内でのやり繰りでは足りなくなっているケースです。この場合、区分変更申請を行い、要介護度の見直しを受けることで、利用できるサービス量そのものを増やせる可能性があります。市区町村の窓口またはケアマネジャーに、状態の変化を具体的に伝えて相談してみてください。

2つ目は、デイサービスと訪問介護の組み合わせだけでは、在宅生活の維持そのものが難しくなってきているケースです。夜間の対応が必要になってきた、日中も目が離せない時間が増えてきた、家族の心身の負担が限界に近づいている——こうしたサインが重なる場合は、定期巡回・随時対応型サービスへの切り替えや、入居系サービスの検討まで視野に入れる段階かもしれません。在宅を続けるための他の選択肢は在宅介護の限界と入居・他サービスの検討、家族の負担を減らす視点全般は家族の介護負担を訪問介護で減らすで扱っています。

大切なのは、「組み合わせを変えてもうまくいかない=自分たちの頑張りが足りない」と捉えないことです。制度の枠組みや利用できるサービスの種類自体を見直す必要があるだけ、というケースは珍しくありません。

まとめ|今日からできること

この記事を読んで、次のことが判断できるようになったはずです。今の困りごとがデイサービス向きか訪問介護向きかの見分け方、見直しにどの程度の手続きが必要か、そしてケアマネジャーに何を伝えれば具体的な提案を引き出せるか——この3点です。

まずは今日、直近1週間分のスケジュールを振り返って、「デイサービスの日でも困っていた場面」と「訪問介護の日でも困っていた場面」を紙に書き出してみてください。それだけで、次にケアマネジャーへ相談するときの材料が揃います。

一人で抱え込まず、担当のケアマネジャーに具体的な場面を伝えるところから、組み合わせの見直しは始められます。実施地域の訪問介護事業所を確認したい場合は、介護ほうもんさーちの検索から探すこともできます。