離れて暮らす親の財布やレシートを見て、「買い物のお金はヘルパーさんに預けて大丈夫だろうか」「通帳からの引き出しも頼めないだろうか」と迷う家族は少なくありません。訪問介護では、お金の受け渡しを伴う手伝いのうち、頼めるものとそうでないものが分かれています。国の通知と、お金の管理を担う別の仕組みをもとに整理しました。

この記事の結論は、次の3つです。

  • ヘルパーに頼めるのは、日用品の買い物と、そのときの品物・お釣りの確認までです。本人が銀行や役所へ出かけるときの外出の介助も、訪問介護の範囲で相談できます。
  • 通帳やキャッシュカードを預かって預金を引き出すことや、家計のやりくりを任せることは、訪問介護のサービス内容に含まれていません。
  • 預金の払い戻しや日常の支払いの手伝いが必要なら、市区町村の社会福祉協議会が窓口の「日常生活自立支援事業」を、本人がひとりで決めることが難しくなっているなら成年後見制度を検討します。

ヘルパーに頼めるお金の手伝いは、どこまで?

日用品の買い物を頼み、そのときの品物とお釣りの確認までをしてもらえます。本人が銀行や役所へ行く外出に付き添ってもらうことも、訪問介護の範囲で相談できます。

訪問介護で何を頼めるかは、厚生労働省の通知「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」(平成12年3月17日、通称「老計第10号」)が土台になっています。この通知は生活援助の一つとして「買い物・薬の受け取り」を挙げ、その中身を「日常品等の買い物(内容の確認、品物・釣り銭の確認を含む)」としています(厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第178回 参考資料2で確認できます)。

つまり、ヘルパーが本人から買い物のお金を受け取り、買ってきた品物とお釣りを本人と一緒に確かめるところまでが、訪問介護の買い物です。買い物で頼める品物の範囲や、調理と組み合わせるときの考え方は、買い物・調理支援を頼むときの確認ポイントにまとめています。

本人が自分で銀行や役所へ行き、窓口やATMで手続きをする場合は、その移動に付き添う「外出の介助」として相談できます。函館市が令和6年9月に作成した「訪問介護サービス利用のご案内」でも、日常生活に必要な買い物や、役所・銀行での手続きなどの外出を、訪問介護で利用できる外出として示しています。外出の介助は身体介護にあたるため、ケアプランに位置づけたうえで利用します。

通帳を預けて、預金の引き出しを頼むことはできる?

できません。通帳やキャッシュカードを預かって代わりに預金を引き出すことや、家計の管理は、訪問介護のサービス内容に含まれていません。こうした手伝いは、別の仕組みである日常生活自立支援事業の役割です。

老計第10号がお金に関わる行為として挙げているのは、上で見た買い物の範囲です。預金の払い戻しや預け入れといった日常生活費の管理は、厚生労働省が日常生活自立支援事業の援助の内容として示しているものです。

訪問介護の事業所によっては、金銭や貴重品の扱いについて、重要事項説明書や運営規程で決まりを定めています。「このくらいなら頼めるだろう」と考える前に、契約時の書面でどう書かれているかを確認してください。どの項目を見ればよいかは訪問介護の契約と重要事項説明書の見方で解説しています。

家族の側から見ると、ヘルパーにお金の管理まで任せると、残高が合わないときに誰に確かめればよいのか分からなくなります。訪問介護では「その日の買い物のお金」だけを扱ってもらい、まとまったお金の管理は家族か、次に説明する仕組みに分けておくと、お金が合わないときに確かめる範囲が、その日の買い物の分だけに絞られます。

買い物のお金は、どう渡すとトラブルになりにくい?

買い物用の財布を一つ決め、その日の買い物に使う分だけを入れておきます。レシートとお釣りを財布に戻してもらい、家族が後から確かめられるようにしておくと、行き違いが起きにくくなります。

ここで紹介するのは、制度で決まった手順ではなく、家族の側で用意できる工夫です。事業所ごとに預かり方の決まりがあるので、初回の打ち合わせでサービス提供責任者に「買い物のお金はどう受け渡しますか」と聞き、その方法に合わせてください。

用意しておくこと具体例
買い物専用の財布本人の普段の財布とは分け、その日に使う分だけを入れる
買い物メモ本人と一緒に、買う品物と量を書いておく
レシートとお釣りの置き場所財布の中や決まった封筒に戻してもらう
確認する人週に一度など、家族が財布の中身とレシートを見る日を決める

離れて暮らす家族が、毎回は確認できないこともあります。その場合は、ケアマネジャーに「買い物のお金の受け渡しで心配がある」と伝えると、サービス担当者会議などで、事業所・家族・本人の間の決め方を話し合えます。離れて暮らす家族が事業所とどう連絡を取るかは、離れて暮らす家族が訪問介護を探すときも参考になります。

預金の出し入れや支払いを頼める「日常生活自立支援事業」とは?

判断能力に不安がある人の預金の払い戻し・預け入れや日常の支払いなどを、社会福祉協議会の支援員が手伝う事業です。窓口は市区町村の社会福祉協議会で、利用料は訪問1回あたり平均1,200円です。

厚生労働省の説明によると、日常生活自立支援事業の実施主体は都道府県・指定都市の社会福祉協議会で、窓口業務などは市区町村の社会福祉協議会が担います。援助の内容は、福祉サービスの利用援助を中心に、それに付随して「預金の払い戻し、預金の解約、預金の預け入れの手続等利用者の日常生活費の管理」や、定期的な訪問による生活の変化の察知が含まれます。

利用できるのは、次の両方にあてはまる人です。

  • 認知症高齢者、知的障害者、精神障害者などで、判断能力が不十分な人
  • この事業の契約の内容について判断できる能力がある人

申し込むと、社会福祉協議会が対象になるかを判断し、支援の内容を「支援計画」にまとめたうえで契約します。利用料は実施主体が定めるもので、厚生労働省は訪問1回あたり平均1,200円としています。契約前の相談と、生活保護を受けている世帯の利用料は無料です。

親のお金に関わる頼みごとを、訪問介護のヘルパー(日用品の買い物と品物・お釣りの確認、銀行や役所への外出の介助まで)、日常生活自立支援事業(預金の払い戻し・預け入れ、日常生活費の管理、通帳や証書の預かり)、成年後見制度(財産の管理や契約の手続き)の3つに分けて比べた図

2026年6月に公布された社会福祉法等の改正法(令和8年法律第51号)では、この事業のもとになっている「福祉サービス利用援助事業」を広げ、頼れる身寄りがいない高齢者なども対象に、入院・入所の手続きの支援や亡くなった後の事務の支援を行えるようにする見直しが盛り込まれました。厚生労働省の概要資料では、この見直しの施行日を公布後2年以内に政令で定める日としており、具体的な開始時期は今後決まります。

判断が難しくなってきたら、成年後見制度を考える?

本人がこの事業の契約内容を理解することが難しくなっている場合や、預金の管理だけでなく契約の手続きなども任せる必要がある場合は、成年後見制度を検討します。

厚生労働省の成年後見制度の案内では、制度を大きく2つに分けています。

制度しくみ
法定後見制度家庭裁判所が後見人などを選ぶ。本人の状態に応じて「補助」「保佐」「後見」の3つの類型がある
任意後見制度本人が元気なうちに、自分で選んだ人と、代わりにしてもらいたいことを契約で決めておく

日常生活自立支援事業は「この事業の契約を自分で結べる人」が対象なので、すでに判断が難しくなっている場合は法定後見、今のうちに備えたい場合は任意後見、という順で考えると整理しやすくなります。認知症の進み方と訪問介護の使い方は、認知症の家族に訪問介護は頼める?で解説しています。

家族が本人に代わって預金を引き出す場面については、全国銀行協会が令和3年2月18日に「金融取引の代理等に関する考え方」を公表しています(金融庁の資料「高齢者等への対応に関する主な取組み」〈令和5年6月27日〉で概要を確認できます)。取り扱いは銀行ごとの手続きによるため、本人の取引銀行に、代理人の登録などの方法を問い合わせてください。

どこから相談を始めればいい?

まずケアマネジャーか地域包括支援センターに、本人がお金のことで困っている場面を具体的に伝えます。そのうえで、社会福祉協議会や後見の相談先を案内してもらうのが近道です。

相談するときは、次の3点を伝えると話が早く進みます。

  1. 困っている場面(買い物のお金の受け渡し、公共料金の支払い忘れ、通帳の置き場所が分からなくなる、など)
  2. 本人が自分でできていること(ATMの操作、残高の確認、支払いの判断など)
  3. 家族が手伝える範囲(月に何回来られるか、遠方から何ができるか)

ケアマネジャーがまだ決まっていない場合や、要支援の方の相談先は、ケアマネ・地域包括支援センターへの相談で窓口の違いを確認できます。一人暮らしの親の食事・服薬・お金をどう分担するかの全体像は、独居高齢者の訪問介護の使い方にまとめています。

この記事で確認できたこと

  • ヘルパーに頼めるお金の手伝いは、日用品の買い物と品物・お釣りの確認まで。本人が銀行や役所へ行く外出の介助も相談できる
  • 通帳を預けての預金の引き出しや家計の管理は、訪問介護のサービス内容に含まれない
  • 預金の払い戻しや日常の支払いの手伝いは、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業が担う。利用料は訪問1回あたり平均1,200円、生活保護受給世帯は無料
  • 本人が契約内容を理解するのが難しい場合は、成年後見制度(法定後見・任意後見)を検討する

これから訪問介護事業所を選ぶ段階であれば、買い物のお金の受け渡し方を、契約前の面談で事業所に確認しておくと比べやすくなります。介護ほうもんさーちの検索では、介護を受ける場所の住所から、実施地域に入っている事業所を探せます。