寒くなってくると、「ひとりでお風呂に入っている親が心配」「ヘルパーさんがいる日に入ってもらえば安心なのでは」と考えたことはないでしょうか。訪問介護では、自宅のお風呂での入浴介助を頼めます。ただ、冬の入浴で気をつけたいことは、ヘルパーに頼む中身と、家族が受け持つ準備の両方にあります。消費者庁の注意喚起と、厚生労働省の通知をもとに整理しました。

冬の入浴と訪問介護について、先に答えをまとめます。

  • 自宅のお風呂での入浴介助は、訪問介護の「身体介護」として頼めます。厚生労働省の通知には、脱衣室の温度確認や湯温の確認、入浴後の水分補給までが一連の流れとして示されています。
  • 消費者庁は、入浴前に脱衣所や浴室を暖める、湯温は41度以下・湯につかる時間は10分までを目安にする、食後すぐや飲酒後・薬を飲んだ後の入浴は避ける、といった点を挙げています。訪問の時間帯や、体調が悪い日の扱いは、ケアマネジャーと事業所に前もって伝えておきます。
  • 体調がいつもと違う日は、体を拭く「清拭」や、手や足だけをお湯につける「部分浴」に切り替える選択肢があります。ヘルパーがいない日の入浴は、デイサービスの入浴や訪問入浴介護、家族の声かけで補います。

冬の入浴は、なぜ高齢の親に注意が必要?

暖かい部屋と寒い脱衣所・浴室の温度差で血圧が大きく変わったり、熱いお湯に長くつかって体温が上がったりして、浴槽の中で意識を失い溺れる事故が冬に増えるためです。

消費者庁が2025年12月23日に公表した注意喚起では、厚生労働省の人口動態統計(令和6年)をもとに、「浴槽内での及び浴槽への転落による溺死及び溺水」で亡くなった人は7,776人で、そのうち65歳以上が7,363人と約95%を占めていたとしています。事故が起こる原因としては、暖かい室内と寒い脱衣所や浴室との温度差などによる急激な血圧の変動と、熱いお湯に長くつかることによる体温の上昇で意識障害が起きることを挙げています。消費者庁のコラム(Vol.12)では、こうした事故は12月・1月といった冬場に多くなっていると説明しています。

消費者庁が示している入浴時の注意点は、次のとおりです。

消費者庁が挙げている注意点家族・ヘルパーで分担するときの考え方
入浴前に脱衣所や浴室を暖める暖房器具を誰がいつ入れるかを決めておく
湯温は41度以下、湯につかる時間は10分までを目安にする湯温計で測る、時間を声かけで区切る
食後すぐ、飲酒後、医薬品を飲んだ後の入浴は避ける訪問の時間を食事や服薬の時間とずらす
浴槽から急に立ち上がらない立ち上がりの介助や見守りをお願いする
入浴前に入浴することを同居者に伝える、同居者はこまめに声をかけるヘルパーがいない日は家族の声かけで見守る

ひとり暮らしの親や、家族が日中いない家庭では、この「声をかける人」がいない日をどうするかが、冬の入浴の一番の課題になります。

訪問介護の入浴介助では、何をしてもらえる?

自宅の浴槽での入浴(全身浴)を、準備から後片付けまで一連の流れで介助してもらえます。体を拭く清拭や、手浴・足浴・洗髪といった部分浴も、身体介護の一つとして通知に示されています。

訪問介護で何を頼めるかは、厚生労働省の通知「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」(平成12年3月17日、通称「老計第10号」)が目安になっています。この通知は、身体介護の「清拭・入浴、身体整容」の中に、清拭(全身清拭)、部分浴(手浴・足浴、洗髪)、全身浴を挙げています。

全身浴の流れとして示されているのは、浴室の安全確認、声かけ・説明、湯はり、排泄の確認、脱衣室の温度確認、脱衣、皮膚などの観察、湯温の確認、入湯、洗体・洗髪、着衣、身体状況の点検・確認、居室への移動、水分補給などです。冬の入浴で気をつけたい温度差や湯温の確認は、もともと入浴介助の手順に含まれていることになります。

ヘルパーがすべてを代わりに行うとは限りません。老計第10号は「入浴、更衣等の見守り(必要に応じて行う介助、転倒予防のための声かけ、気分の確認などを含む)」も、自立を支える見守り的援助として身体介護に位置づけています。体を洗うのは自分でできても、浴槽をまたぐときや立ち上がるときにふらつく親であれば、その場面だけ手を貸してもらう形も相談できます。

入浴介助の内容や回数は、ケアマネジャーが作るケアプランと、事業所のサービス提供責任者が作る訪問介護計画で決まります。頼める範囲の全体像や、医行為との線引きは入浴介助を訪問介護で頼むときの確認ポイントで詳しく扱っています。

冬に向けて、ケアマネジャーや事業所と何を決めておく?

「脱衣所を誰が暖めるか」「訪問の時間帯」「体調が悪い日にどうするか」「家族への連絡」の4つです。冬になってから慌てないよう、寒くなる前の相談がおすすめです。

冬の入浴の日に、脱衣所と浴室を暖め、入浴前に体調を確かめ、いつもと違えば清拭や部分浴に切り替え、家族やケアマネジャーに共有するまでの流れ

1つ目は、脱衣所と浴室を暖める段取りです。ヘルパーの訪問時間は決まっているため、訪問してから暖房を入れると、暖まるまでの時間がサービスの時間を圧迫します。家族が出かける前に暖房器具の場所を決めておく、タイマー付きの暖房を使う、ヘルパーが到着してすぐ暖房を入れて湯はりの間に暖める、など家庭に合う方法を事業所と話しておきます。

2つ目は、訪問の時間帯です。消費者庁は食後すぐや薬を飲んだ後の入浴を避けるよう呼びかけているため、昼食や服薬の時間と重ならない時間に入浴の訪問を組めるかを相談します。家族が帰宅してから入浴に立ち会えるよう夕方以降に訪問を移す場合は、午後6時から午後10時は「夜間」、午前6時から午前8時は「早朝」として所定の単位数の100分の25、午後10時から午前6時は「深夜」として100分の50が加算される決まりがあるため、自己負担が変わります。時間の変え方は訪問介護の曜日・時間は変更できる?を参考にしてください。

3つ目は、体調がいつもと違う日の扱いです。「熱がある」「顔色が悪い」「ふらつく」といった日に入浴を見合わせる基準と、その日は清拭や足浴に切り替えるのかを、ケアプランや訪問介護計画をつくる段階で確かめておきます。厚生労働省医政局長の通知(平成17年7月26日、医政発第0726005号)では、腋の下などでの体温測定や、自動血圧測定器による血圧測定は原則として医行為ではない行為として示されています。入浴前に体温や血圧を測ってもらえるか、測った値をどう判断の目安にするかは、主治医の意見も踏まえて事業所と決めます。

4つ目は、家族への連絡です。入浴を見合わせた日や、入浴中に気になる様子があった日に、家族やケアマネジャーへどう伝えてもらうかを決めておくと、次の日以降の見守りにつなげられます。

体調が悪い日や、ヘルパーが来ない日の入浴はどうする?

体調が悪い日は清拭や部分浴に切り替え、ヘルパーが来ない日は、入浴をヘルパーの日やデイサービスの日にまとめる、訪問入浴介護を使う、家族が声をかけるといった方法を組み合わせます。

冬の間の入浴の機会をどう確保するかは、家族の状況によって選び方が変わります。

状況検討できる方法
入浴の日に体調がいつもと違う清拭(体を拭く)や、手浴・足浴・洗髪などの部分浴に切り替える
ひとり暮らしで、ヘルパーがいない日に入浴している入浴をヘルパーの訪問日にまとめる、デイサービスの入浴を使う
自宅の浴槽をまたぐのが難しくなってきた浴槽を持ち込む訪問入浴介護を検討する
同居家族がいるが、日中は仕事で不在家族の帰宅後に声かけしながら入る日と、ヘルパーの日を分ける

デイサービスでは入浴を受けられるところが多く、送迎があるため、寒い時期に自宅の浴室を使わずに済む日をつくれます。訪問介護との組み合わせ方はデイサービスと訪問介護は併用できる?で整理しています。自宅の浴槽での入浴が難しくなってきた場合は、簡易浴槽を持ち込む訪問入浴介護という別のサービスもあります。

ヘルパーも家族もいない時間帯の見守りには、民間の見守りサービスを組み合わせる方法もあります。訪問介護との役割分担は民間の見守りサービス、訪問介護とどう組み合わせる?で扱っています。

入浴の回数を増やすことが、そのまま介護保険で認められるとは限りません。回数や組み合わせは、本人の状態とケアプランの目標から決まります。「冬の間はひとりで入浴させたくない」という家族の考えを、ケアマネジャーに理由と一緒に伝えるところから始めます。

相談する前に、家族が書き出しておくこと

ケアマネジャーや事業所に相談するときは、次の3点をメモにしておくと話が早く進みます。

  1. 今の入浴のしかた(週に何回、どの時間帯に、ひとりで入っているか、湯温や入浴時間の習慣)
  2. 気になっている様子(浴槽から立ち上がるときのふらつき、入浴後のぼんやりした様子、脱衣所の寒さ)
  3. 家族ができること(帰宅時間、暖房器具を入れておけるか、声をかけられる日)

夏の暑さへの備えは高齢者の熱中症と訪問介護の使い方で、冬に流行する感染症への備えはインフルエンザ・コロナにかかったときの訪問介護で扱っています。季節ごとに、家族とヘルパーの分担を見直すきっかけにしてください。

冬の入浴を訪問介護で支えるときに押さえること

  • 浴槽での溺死・溺水で亡くなる人の約95%は65歳以上で、冬場に多い(消費者庁、人口動態統計 令和6年)
  • 入浴介助は身体介護として頼め、脱衣室の温度確認や湯温の確認も一連の流れに含まれている(老計第10号)
  • 脱衣所を暖める段取り、訪問の時間帯、体調が悪い日の切り替え、家族への連絡の4つを前もって決めておく
  • 夕方以降や早朝に訪問を移すと、夜間・早朝・深夜の加算で自己負担が変わる
  • ヘルパーが来ない日は、デイサービスの入浴、訪問入浴介護、家族の声かけで補う

入浴介助の受け方や体調不良時の対応は、事業所によっても違います。介護ほうもんさーちの検索で親の自宅の住所から訪問できる事業所を絞り込み、契約前の面談で、冬の入浴介助の段取りや、入浴を見合わせる日の対応を聞いてみてください。