「親の訪問介護の領収証、確定申告で使えるの?」。年末が近づくと、こうした疑問を持つご家族がいます。ヘルパーの費用は毎月払っているのに、医療費控除に入れてよいのか、入れられるならどの金額なのかは、領収証を見ただけでは分かりにくいものです。国税庁の案内をもとに、対象になる条件と準備の手順を整理しました。

要点は3つあります。

  • 訪問介護の自己負担は、同じ月のケアプランに訪問看護などの医療系サービスが入っている場合に限って、医療費控除の対象になります。生活援助(掃除・洗濯・調理など)が中心の訪問介護は、医療系サービスと併せて使っていても対象外です。
  • 対象になる金額は、事業所が発行する領収証に記載されることになっています。まず手元の領収証に「医療費控除の対象額」の欄があるかを確認してください。
  • 医療費控除で差し引けるのは、1年間の医療費の合計から保険などで補てんされた分と10万円(総所得金額等が200万円未満の人は、その5%)を引いた部分です。高額介護サービス費で払い戻しを受けた分も差し引いて計算します。

訪問介護の自己負担は、医療費控除の対象になる?

なる場合と、ならない場合があります。訪問看護や訪問リハビリなどの医療系サービスと同じ月に使っていれば対象になり、訪問介護だけ、またはデイサービスなど福祉系のサービスとの組み合わせだけなら対象外です。

国税庁のタックスアンサー「No.1127 医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価」は、介護保険の居宅サービスを3つのグループに分けています。

  1. それだけで医療費控除の対象になるサービス:訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導(医師などによる管理・指導)、通所リハビリテーション、短期入所療養介護など、看護師や医師などが関わる「医療系サービス」
  2. 1と併せて使う場合だけ対象になるサービス:訪問介護(生活援助中心型を除く)、夜間対応型訪問介護、訪問入浴介護、通所介護(デイサービス)、短期入所生活介護など、介護福祉士などが行う「福祉系サービス」。総合事業の訪問型サービス(生活援助中心のものを除く)もここに入ります
  3. 対象外のサービス:生活援助中心型の訪問介護、福祉用具の貸与、認知症高齢者グループホーム、有料老人ホーム等の特定施設など

訪問介護は2つ目のグループです。国税庁の説明では、福祉系サービスは日常生活上の世話ですが、医療系サービスと併せて使った場合には「療養上の世話」にあたるとされ、その自己負担が対象になります。

「医療系サービスと併せて使う」とは、どういう状態?

1か月単位のケアプランに医療系サービスが入っていることを指します。具体的には、ケアマネジャーから毎月渡される「サービス利用票」に、訪問看護などが載っているかで判断されます。

同じタックスアンサーは、「医療系サービスと併せて利用した場合」を「1か月単位のケアプランに医療系サービスが位置付けられている場合」と説明し、居宅介護支援事業者などから交付される「サービス利用票」に医療系サービスが記載されているかどうかで判断するとしています。

判断は月ごとです。たとえば、4月から9月は訪問看護を使い、10月からは訪問介護だけになった場合、医療系サービスが入っていた月の訪問介護は対象になり、10月以降の分は対象になりません。

身体介護と生活援助のどちらで算定されているかでも分かれます。生活援助中心型として算定された訪問は、医療系サービスと同じ月でも対象外です。区分の違いは訪問介護の時間区分の見方|身体介護と生活援助の違いで説明しています。

訪問介護の自己負担が医療費控除の対象になるかの判断の流れ。介護保険の給付対象か、生活援助中心型ではないか、同じ月のケアプランに訪問看護などの医療系サービスがあるかを順に確認し、すべて満たせば対象になる

医療系サービスを使っていない月でも、例外が1つあります。介護福祉士などが研修を受けて行うたんの吸引や経管栄養(喀痰吸引等)は、その月に医療系サービスがなくても、訪問介護の自己負担のうち10分の1に相当する金額が対象になるとされています。喀痰吸引等を頼める条件は訪問介護で受けられる医療的ケアにまとめています。

対象になる金額は、どこで確認する?

事業所が発行する領収証です。国税庁は、居宅サービス事業者が発行する領収証には、基本的に医療費控除の対象となる金額が記載されることになっていると説明しています。

訪問介護の領収証に「医療費控除の対象額」などの欄があり、金額が入っていれば、その金額を医療費として集計します。欄が空白または0円の場合は、その月は対象外と扱われている可能性があります。

金額の欄がない、記載の理由が分からないといった場合は、次の順に確認すると早く解決します。

  1. 訪問介護の事業所に聞く:領収証の記載方法と、その月をどう扱ったかを確認します。
  2. ケアマネジャーに聞く:その月のサービス利用票に医療系サービスが載っていたかを確認します。
  3. 税務署に聞く:個別の判断に迷う場合は、所轄の税務署の相談窓口で確認します。

注意したいのは、介護保険の対象にならない部分です。国税庁の質疑応答事例「訪問介護の居宅サービス費」は、対象を「介護保険給付の対象となるものに係る自己負担額」に限っています。区分支給限度額を超えて全額自己負担になった分や、介護保険外の自費サービスの料金は、この取扱いに含まれません。

控除できるのは、いくら?

1年間に支払った医療費の合計から、保険などで補てんされた額と10万円(総所得金額等が200万円未満の人はその5%)を引いた金額です。上限は200万円です。

国税庁の「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」によると、医療費控除は次の式で計算します。

(1年間に実際に支払った医療費の合計額 − 保険金などで補てんされる金額)− 10万円(総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%)

訪問介護の対象額は、病院の窓口負担や薬代と合わせて集計します。対象になるのは、1月1日から12月31日までに実際に支払った金額です。

訪問介護の自己負担が多かった月に高額介護サービス費の払い戻しを受けた場合は、その払い戻し額を医療費から差し引いて計算します。払い戻しの仕組みは高額介護サービス費とは?在宅で訪問介護を使う人の自己負担が戻る仕組みで取り上げています。

医療費控除は所得から差し引く控除なので、戻ってくる税額は、控除額にその人の所得税率などをかけた額になります。控除額がそのまま戻るわけではありません。

親の介護費を子どもが払っている場合は?

医療費控除は、自分と「生計を一にする」配偶者や親族のために支払った医療費が対象です。親の訪問介護の費用を子どもが実際に支払い、生計を一にしていれば、子どもの申告に含められます。

No.1120は、納税者が自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費を対象としています。国税庁の質疑応答事例「同居していない母親の医療費を子供が負担した場合」は、所得税基本通達2-47をもとに、一人暮らしの母親が子どもの仕送りで生活しているような場合は生計を一にしていることになり、子どもが支払った医療費は子どもの医療費控除の対象になると説明しています。親の年金から支払っている場合は、支払った人は親です。誰の申告に含めるかは、誰がお金を出しているかと生計の状況で決まるため、迷うときは税務署に確認してください。

おむつ代や交通費はどうなる?

おむつ代は、医師などが発行する「おむつ使用証明書」などがある場合に限って対象です。デイサービスなどに通う交通費は、そのサービスの自己負担が対象になった場合で、通常必要なものに限られます。

No.1127の注記によると、居宅サービスの中でおむつを使った場合のおむつ代は、医師などが発行する「おむつ使用証明書」がある場合に限り対象です。市区町村が要介護認定の主治医意見書の内容を確認した書類、または主治医意見書の写しで代えることもできます。どの書類を出してもらえるかは、市区町村の介護保険担当課に確認してください。

通所リハビリテーションや通所介護などを受けるために施設へ通う交通費は、そのサービスの自己負担が医療費控除の対象になった場合で、通常必要なものに限り対象とされています。

申告までに、何を準備しておけばいい?

1年分の領収証を事業所ごとに保管し、「医療費控除の対象額」を月ごとに書き出しておきます。確定申告書には、領収証そのものではなく「医療費控除の明細書」を添付します。

準備の順番は次のとおりです。

  1. 訪問介護・訪問看護など、すべての事業所の領収証を1年分そろえる
  2. 領収証ごとに「医療費控除の対象額」を書き出し、病院・薬局の医療費と合計する
  3. 高額介護サービス費の払い戻しがあれば、その額を差し引く
  4. 「医療費控除の明細書」を作り、確定申告書に添付する

No.1120は、明細書の内容確認のため、確定申告期限などから5年間は、税務署から領収証の提示や提出を求められる場合があるとしています。申告が終わっても、領収証は捨てずに保管してください。

ケアプランに訪問看護が入っているかどうかは、年の途中で変わることがあります。サービス利用票は毎月ケアマネジャーから届くので、領収証と一緒に保管しておくと、後から月ごとの扱いを確かめやすくなります。訪問看護などとの組み合わせ方は訪問看護・デイ・福祉用具との併用も参考にしてください。

申告のときに間違えやすいのは?

  • 訪問介護の支払額を全部入れてしまう:対象は領収証の「医療費控除の対象額」です。医療系サービスを使っていない月や、生活援助中心型の分は含めません。
  • 「訪問看護も来ているから対象」と思い込む:国税庁が示す判断の基準は、その月のサービス利用票に医療系サービスが載っているかです。訪問看護を医療保険で使っている場合など、扱いが分からない月はケアマネジャーと事業所に確認してください。
  • 高額介護サービス費の払い戻しを引き忘れる:払い戻された分は医療費から差し引きます。
  • 自費のヘルパー料金を含める:介護保険の給付対象外の部分は、この取扱いの対象に含まれません。

まとめ:申告の前に確かめること

  • 訪問介護の自己負担が医療費控除の対象になるのは、同じ月のケアプランに医療系サービスがある場合。生活援助中心型は対象外
  • 「併せて使う」かどうかは、毎月のサービス利用票に医療系サービスが載っているかで判断される
  • 対象額は事業所の領収証に記載される。迷ったら事業所、ケアマネジャー、税務署の順に確認する
  • 控除額は、補てん額と10万円(または総所得金額等の5%)を引いた部分。高額介護サービス費の払い戻しは差し引く