秋から冬にかけて、インフルエンザや新型コロナなどの感染症が広がる時期になると、「親が熱を出したら、ヘルパーさんは来てくれるのだろうか」「同居している自分が感染したら、訪問を断られるのでは」と心配になるご家族がいます。いざ熱が出た朝に慌てないよう、制度上の決まりと、家族が先に確認しておけることを整理しました。

この記事の結論は、次の3つです。

  • 訪問介護事業所は、正当な理由なくサービスの提供を拒めません(運営基準第9条)。本人に熱が出た、感染症と診断されたというだけで、訪問が自動的に打ち切られるわけではありません。
  • 厚生労働省の「介護現場における感染対策の手引き(第3版、令和5年9月)」は、発熱した利用者への訪問について、ケアマネジャー等と連携してサービスの必要性を見直し、感染対策を徹底したうえで提供を続けることを基本にしています。そのかわり、訪問の順番・時間・担当者・内容が変わることはあります。
  • 熱が出たときに家族が最初にすることは、訪問前に事業所へ連絡することです。流行期に入る前に、事業所の感染症発生時の方針と連絡先、キャンセルの扱いを確認しておくと、当日の判断が早くなります。

本人が発熱・感染したら、訪問介護は止まる?

自動的には止まりません。事業所はケアマネジャー等と連携してサービスの必要性を見直し、感染対策をとったうえで訪問を続けるのが、国の手引きが示す基本の対応です。

訪問介護事業所の運営ルールを定めた厚生労働省令(指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準)の第9条は、「指定訪問介護事業者は、正当な理由なく指定訪問介護の提供を拒んではならない」と定めています。この「正当な理由」として国の解釈通知が示しているのは、職員が足りず申込みに応じきれない、自宅が事業所の通常の実施地域の外にある、その他自ら適切なサービスを提供することが困難、といった場合です。利用者が感染症にかかったこと自体は、例として挙げられていません。

さらに、厚生労働省老健局の「介護現場における感染対策の手引き(第3版)」は、訪問系サービスの留意点として、発熱者に対応する場合は保健所とよく相談したうえで、居宅介護支援事業所(ケアマネジャー)等と連携し、サービスの必要性を再度検討のうえ、感染防止策を徹底させてサービスの提供を継続すると書いています。

一人暮らしの方や、寝たきりで食事・排せつに介助が必要な方にとって、熱が出ている期間こそ支援が欠かせません。手引きの考え方もこの点を前提にしています。ただし「必要性を再度検討」とあるとおり、何をどこまで続けるかは、本人の状態とケアマネジャーとの相談で決め直すことになります。

訪問を続ける場合、ヘルパーの動き方はどう変わる?

担当を分ける、その日の最後に訪問する、滞在時間を短くする、手袋やマスクを着けるといった対応がとられます。訪問の時刻や内容が普段と変わる前提で考えておくと戸惑いません。

手引きは、感染の疑いがある利用者を訪問するときの留意点として、次のような対応を挙げています。

  • 可能な限り担当職員を分ける、または最後に訪問する
  • 訪問時間を可能な限り短くできるよう工夫する
  • 訪問時には換気を徹底する
  • 職員は使い捨て手袋と不織布マスクを着用し、咳込みなどがあれば必要に応じてゴーグルや長袖ガウン等も着用する
  • サービス提供の開始時と終了時に、手洗いまたは手指消毒を行う

これらは、職員を介して別の利用者へ病原体を運ばないための対策です。家族から見ると「いつもの時間に来ない」「いつもの方ではない」「掃除まではしてもらえなかった」という形で表れることがあります。サービスを減らされたのではなく感染対策による変更である、と受け止めたうえで、本人にとって欠かせない支援(食事、水分、排せつ、服薬の声かけなど)が残っているかを確認してください。

家の側で準備できることもあります。換気のために開けやすい窓がある部屋で過ごしてもらう、ヘルパーが手を洗える洗面所を空けておく、使用済みのティッシュ等をまとめて捨てられる袋を用意しておく、といった点です。何を用意すればよいかは事業所によって方針が異なるため、熱が出たと連絡するときに一緒に聞いておくと、当日の準備に迷いません。

同居している家族が感染したときは、どうなる?

家族の感染だけを理由に訪問介護が止まるとは限りません。ただし、事業所が訪問の時間帯や動き方を調整するため、家族の感染や体調不良は訪問前に必ず伝えてください。

手引きは、訪問系サービスで大切なこととして、利用者から利用者へ職員を介して病原体を持ち運ばないことを挙げています。同居の家族が感染している場合、ヘルパーが感染する経路が家の中にあることになるため、事業所は訪問の順番や、訪問中に家族と距離をとる方法を考える必要があります。

伝えるときは、次の3点をそろえると事業所が判断しやすくなります。

  • 誰が、いつから、どんな症状があるか(受診して診断が出ていれば病名も)
  • 本人(利用者)に症状があるかどうか
  • 訪問中に、感染した家族が別の部屋で過ごせるかどうか

もう一つ見落とされやすいのが、感染した家族が普段担っていた介護の穴です。夕食の支度や夜間のトイレ介助を同居家族が担っていた場合、その家族が寝込むと、支援が必要な時間帯そのものが増えます。一時的に訪問の回数や時間を増やせるか、ケアマネジャーに相談してください。ケアプランの見直しは介護保険の利用限度額の範囲で行うため、どこまで増やせるかは訪問介護の利用限度額が近いときの見直し方も参考になります。

デイサービスを休んだ日は、訪問介護で補える?

補えるかどうかをケアマネジャーが検討します。手引きには、発熱でデイサービスの利用を断った利用者について、ケアマネジャーに情報を伝え、訪問介護等の提供が必要かを検討する流れが書かれています。

手引きは通所系サービス(デイサービス等)の留意点として、送迎前に体温を測り、発熱が認められる場合は利用を断ること、そのうえで断った利用者についてはケアマネジャーに情報提供し、訪問介護等の提供が必要かを検討することを示しています。

普段デイサービスで昼食や入浴をとっている方の場合、休んだ日に食事がとれない、薬が飲めないといった空白が生まれます。デイサービスから休みの連絡があった時点で、家族からもケアマネジャーに「その日の昼食と服薬はどうするか」を確認すると、訪問の追加が必要かどうかの判断が早く進みます。デイサービスと訪問介護の組み合わせ方の基本はデイサービスと訪問介護を併用する考え方で整理しています。

ヘルパー側が感染して人手が足りないときは?

職員は発熱があれば出勤しないため、流行期には訪問の時刻変更や担当交代が起きます。事業所には感染症の発生時にも支援を続けるための業務継続計画(BCP)の策定が義務づけられています。

手引きは、職員が出勤前に体温を測り、発熱などの症状がある場合は出勤しないことを求めています。流行期に複数の職員が同時に休むと、事業所は限られた人数で訪問を回すことになります。

こうした事態に備えて、運営基準第30条の2は、感染症や非常災害の発生時にも利用者へのサービス提供を継続し、早期に業務を再開するための計画(業務継続計画)を策定し、職員への研修と訓練を定期的に行うことを事業所に求めています。また第31条は、感染症の予防とまん延防止のための委員会をおおむね6月に1回以上開くこと、指針を整えること、研修と訓練を行うことを定めています。

厚生労働省が示している業務継続計画の作成例(訪問系)には、職員が減ったときに続ける業務を分類する「優先業務の選定」という項目があります。どの支援を優先するかは事業所ごとの計画によりますが、人手が限られる期間は、訪問の組み直しに伴って掃除など一部の支援が延期になる場合があります。台風や地震のときの考え方は災害時の訪問介護とBCPの記事で詳しく解説しています。

熱が出た朝、家族はどの順番で連絡すればいい?

まず訪問前に事業所へ、次にケアマネジャーへ、並行してかかりつけ医へ相談します。訪問予定の時刻より前に事業所へ伝えることがいちばん大切です。

発熱や感染に気づいたとき、本人・同居家族・ヘルパーのどこで起きたかによって、事業所・ケアマネジャー・かかりつけ医へ連絡する順番と、訪問のされ方がどう変わるかを整理した図

連絡先伝えること目的
訪問介護事業所(訪問前)誰に・いつから・どんな症状か、体温担当・順番・感染対策を準備してもらう
ケアマネジャー同じ内容と、家族の介護ができなくなったか訪問の追加・デイの休みの穴埋めを検討してもらう
かかりつけ医症状と経過受診の要否、自宅での過ごし方を相談する

手引きでも、利用者に感染の疑いがある場合は、かかりつけ医等に電話で相談して受診につなげること、事業所から家族や居宅介護支援事業所へ報告することが対応の流れとして示されています。家族側から先に連絡を入れておくと、事業所・ケアマネジャー・医師の情報がそろうまでの時間が短くなります。

熱が出たことで訪問を取りやめる場合、当日の連絡だとキャンセル料がかかる契約もあります。キャンセル料の有無と連絡期限は事業所ごとに重要事項説明書に書かれているため、訪問介護のキャンセル料の決まり方を見ながら、流行期に入る前に一度確認しておいてください。

流行期に入る前に、事業所に確認しておきたいことは?

感染症が出たときの訪問の方針、夜間・休日の連絡先、キャンセルの扱い、人手が減ったときに優先される支援の4点です。契約時の重要事項説明書と、担当者への口頭の確認で足ります。

次の質問を、次回の訪問時やサービス担当者会議の場で聞いておくと、当日の判断材料になります。

  1. 本人や家族に熱が出たとき、訪問はどうなりますか:担当や時刻が変わる可能性、家で用意しておくもの
  2. 連絡は何時までに、どこへ入れればよいですか:早朝・夜間・休日の連絡先
  3. 熱で訪問を休む場合、キャンセル料はかかりますか:体調不良による当日連絡の扱い
  4. 職員が足りなくなったとき、どの支援を優先しますか:本人にとって外せない支援(食事・排せつ・服薬の声かけ等)を伝えておく

あわせて、本人の平熱と普段飲んでいる薬の一覧を、家族とヘルパーが見られる場所にまとめておくと、「いつもと違う」ことに気づきやすくなります。手引きでも、検温に加えて「いつもよりぐったりしている」といった状態の変化に注意することが挙げられています。

よくある行き違いは?

  • 熱が出たので自己判断で訪問を断ってしまう:一人暮らしの方は、その日の食事や水分がとれなくなります。断るかどうかは事業所とケアマネジャーに相談してから決めてください。
  • 家族の感染を伝えずに訪問を受ける:ヘルパーが感染すると、他の利用者への訪問にも影響が出ます。症状がある家族がいることは、訪問前に伝えてください。
  • いつもと違う対応に不満だけが残る:時刻や担当の変更は感染対策の一部です。変更によって抜けた支援がある場合は、その点を具体的にケアマネジャーへ伝えると、ケアプランの調整につながります。

この記事で確認できたこと

  • 感染や発熱だけを理由に、訪問介護が自動的に止まるわけではない(運営基準第9条、感染対策の手引き)
  • 訪問を続ける場合は、担当・順番・滞在時間・内容が変わることがある
  • 家族の感染、デイサービスの休み、ヘルパー側の欠勤は、それぞれ訪問前の連絡とケアマネジャーへの相談で穴を埋めていく

これから事業所を選ぶ段階であれば、感染症が出たときの対応や緊急時の連絡先を、重要事項説明書で比べておくと判断しやすくなります。どの項目に書かれているかは訪問介護の契約と重要事項説明書の見方で確認できます。