「最近、親が家から出なくなった。ヘルパーさんと一緒に近所を歩いてもらえたら」と考えたことのある家族もいるのではないでしょうか。訪問介護で散歩の付き添いを頼めるかどうかは、散歩の目的と、ケアプランに位置づける手続きによって答えが変わります。厚生労働省の通知と、いくつかの自治体が公表している取り扱いをもとに整理しました。

散歩の付き添いについて、先に答えをまとめます。

  • 気分転換や日課としての散歩の付き添いは、介護保険の訪問介護では頼めません。
  • 歩く力の維持や閉じこもりの改善など、ケアプランの目標を達成するために必要で、ヘルパーがそばで常に介助できる状態で見守る散歩なら、身体介護の「見守り的援助」として認められることがあります。最終的に判断するのは市区町村(保険者)です。
  • 認められるかどうかや手続きは市区町村によって違うため、まずケアマネジャーに、外へ出なくなった経緯と歩くときの様子を伝えて相談します。

ヘルパーに散歩の付き添いを頼むことはできる?

散歩そのものは、訪問介護のサービスとして定められていません。ただし、自立した生活を支えるための「見守り的援助」としてケアプランに位置づけられ、市区町村が必要と認めれば、訪問介護の対象になりえます。

訪問介護で何を頼めるかは、厚生労働省の通知「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」(平成12年3月17日、通称「老計第10号」)が目安になっています。この通知に「散歩」という項目はありません。兵庫県が平成21年7月に県内の事業所向けに示した取り扱いでも、このことを理由に「単に散歩を訪問介護のサービスとして位置付け、報酬算定を行うことはできません」としています。

一方、厚生労働省老健局振興課は平成21年7月24日の事務連絡「適切な訪問介護サービス等の提供について」(介護保険最新情報Vol.104)で、ヘルパーの散歩の同行について考え方を示しました。自立支援や日常生活動作の向上の観点から、安全を確保しつつ常時介助できる状態で行うもので、ケアプランの長期目標・短期目標を達成するために必要な行為として位置づけられる場合は、老計第10号の「自立生活支援のための見守り的援助」にあたると考えられる、という内容です。そのうえで「保険者が個々の利用者の状況等に応じ必要と認める場合において、訪問介護費の支給対象となりうる」としています。

見守り的援助は身体介護の一つです。老計第10号はその例として「移動時、転倒しないように側について歩く(介護は必要時だけで、事故がないように常に見守る)」を挙げています。散歩の付き添いが認められるのは、この「転ばないようにそばについて歩く」支援が、本人の生活を立て直すために必要な場合だと考えると分かりやすくなります。

介護保険で認められるのは、どんな散歩?

目的が気分転換ではなく「歩く力を保つ」「閉じこもりを改善する」といった生活の立て直しにあり、ひとりで歩くと危ないためにヘルパーが常にそばで見守る必要がある散歩です。

自治体が公表している取り扱いを並べると、認められる場合とそうでない場合の線は、おおむね次のように引かれています。

認められることがある散歩認められない散歩・外出
日常生活動作(ADL)を保つ・高めるために、ケアプランの目標として位置づけたもの日課だった散歩を続けたい、という希望に応えるだけのもの
閉じこもりがちな状態を改善する、または防ぐためのもの外を歩きたい、気分転換をしたい、という希望だけのもの
認知症による不穏(落ち着かなさ)をやわらげるためのもの杖などを使って、本人が安全に歩けると判断されるもの
ひとりで歩くと転倒の危険があり、ヘルパーが常に介助できる状態で見守る必要があるもの習い事、親戚や友人の家、娯楽施設、祭りなどのイベント、花見への外出

表の左側は兵庫県・船橋市・渋川市(群馬県)、右側は兵庫県・京都市・渋川市の取り扱いから整理しました。京都市は、趣味嗜好や単なる気分転換のための散歩の同行は介護報酬の算定対象にならず、身体の状況から(杖歩行も含め)安全に歩行できると判断される場合も算定できないと明記しています。渋川市は、運動療法として行う歩行訓練のような医療リハビリの一環は、訪問介護として算定するのは不適切としています。

このほか京都市は、訪問介護が居宅のサービスであることから、散歩の起点と終点は原則として自宅になるとしています。船橋市は、おおむね1時間を超えるような散歩が必要な場合は、医師などに確認して所見を記録するよう求めています。

ご家族の状況にあてはめるなら、「なぜヘルパーと一緒でなければ歩けないのか」「歩くことで何を取り戻したいのか」を言葉にできるかどうかが、相談の出発点になります。

買い物や通院の付き添いとは、何が違う?

通院や日用品の買い物の付き添いは、目的地へ行くための「外出介助」です。目的地のない散歩は、見守り的援助として必要性が認められた場合に限って対象になります。

老計第10号は身体介護の一つに「通院・外出介助」を挙げ、その流れを「目的地(病院等)に行くための準備→バス等の交通機関への乗降→気分の確認→受診等の手続き」と示しています。日常生活に必要な通院や買い物の外出は、こちらで相談します。世田谷区は、散歩の同行は見守り的援助にあたり、目的地に行くための外出介助とは異なると整理しています。

買い物については、老計第10号の見守り的援助の例に「車イス等での移動介助を行って店に行き、本人が自ら品物を選べるよう援助」も挙がっています。ヘルパーが代わりに買ってくるのではなく、本人が店まで出かけて自分で品物を選ぶ形にすると、外出の機会と、買い物という生活の動作の両方を続けられます。散歩の付き添いが認められにくいときに、ケアマネジャーと検討できる方法の一つです。ヘルパーに頼める買い物の範囲は、買い物・調理支援を頼むときの確認ポイントで扱っています。

市区町村によって扱いが違うのはなぜ?

国の事務連絡が、保険者である市区町村に「個々の利用者の状況に応じて判断する」よう求めているためです。ほかのサービスを先に検討させるか、市への相談票を求めるかなどは、市区町村ごとに決めています。

この事務連絡は、行為の内容だけで一律機械的に保険給付の可否を判断せず、個々の利用者の状況に応じて判断するよう保険者に求めています。その結果、自治体の取り扱いには次のような違いがあります。

自治体主な取り扱い
兵庫県閉じこもりがちなら通所介護、筋力低下の防止や退院後のリハビリなら訪問リハビリ・通所リハビリなどの利用を、まず検討する
京都市他の介護サービスを受けることが難しい、他のサービスでは目標の達成が難しい、などの合理的な理由が必要
渋川市(群馬県)他のサービスに加え、家族や地域の支援で対応できないかも確認する。ケアマネジャーが相談票を市に提出し、市が必要性を確認する
船橋市ADLの向上、閉じこもりの防止、認知症による不穏の解消のために必要な場合に利用できる
世田谷区ケアマネジャーが適切なアセスメントで必要と判断すれば算定対象になりうる。他のサービスの利用を優先して検討することは必ずしも必要ではない

兵庫県は平成21年7月、世田谷区は平成22年4月の通知で、京都市・船橋市は市の公式ページ、渋川市は市の資料で確認しました。現在の運用は各自治体の窓口で確かめてください。

同じ「散歩の付き添い」でも、ある市では通所介護などを先に検討する必要があり、別の区ではケアマネジャーの判断で始められる、ということが起こりえます。インターネットで見た他の地域の例が、そのまま自分の市区町村にあてはまるとは限りません。

散歩の付き添いが訪問介護の対象になるかを、目的が歩く力の維持や閉じこもりの改善か、ひとりで歩くと危ないか、デイサービスや訪問リハビリで代われないか(市区町村による)、ケアプランへの記載とサービス担当者会議、の順にたどって判断する流れ図

ケアマネジャーにはどう相談すればいい?

「散歩に付き添ってほしい」と頼むより、外へ出なくなった経緯、歩くときに危ない場面、歩けるようになったら何をしたいか、の3点を伝えます。そこからケアマネジャーが、散歩が必要か、別のサービスが合うかを検討します。

相談のときに伝えたいのは、次の3点です。

  1. 外に出なくなった時期ときっかけ(退院してから、転んでから、デイサービスに行かなくなってから、など)
  2. 歩くときの様子(ふらつく場所、杖や歩行器を使っているか、ひとりで出かけて道に迷ったことがあるか)
  3. 取り戻したい生活(近所のスーパーまで歩いて行きたい、通っていたデイサービスに戻りたい、など)

3番目は、ケアプランに書く目標の材料になります。国の事務連絡は、散歩がケアプランの長期目標・短期目標を達成するために必要な行為であることを前提にしているためです。

ケアマネジャーが散歩を訪問介護に位置づけると判断した場合、兵庫県や渋川市の取り扱いでは、次の手順をとります。

  • ケアプランに、散歩が必要な理由、ほかのサービスと比べて必要と判断した理由、具体的な内容と所要時間を書く
  • サービス担当者会議を開き、本人・家族の意向や、事業所・医師などの意見を聞いて、必要性と安全面を確かめる
  • 始めた後も実施状況を確かめ、続ける必要があるか、ほかのサービスに移れるかを見直す

散歩の付き添いが認められた場合は身体介護として扱われるため、兵庫県・京都市・渋川市は、所要時間を20分以上としたうえで、必要以上に長くしないよう求めています。自己負担は、身体介護の時間区分に応じて決まります。時間区分の考え方は訪問介護の時間区分の見方で、会議で何を話すかはサービス担当者会議で訪問介護について話すことで解説しています。

京都市や兵庫県は、アセスメントや記録が不十分なまま算定した場合などに、報酬の返還を求めることがあるとしています。家族の側も、散歩の付き添いは話し合いとケアプランへの記載を経て始まるものだと知っておくと、事業所から手続きを求められたときに戸惑わずに済みます。

対象にならなかったら、どんな方法がある?

閉じこもりの改善にはデイサービス、歩く力の回復には訪問リハビリや通所リハビリが、介護保険の中の選択肢です。気分転換のための散歩には、自費(介護保険外)のサービスや家族の付き添いを考えます。

散歩の付き添いが認められなかった場合も、目的によっては介護保険の別のサービスで対応できます。

目的検討できるサービス・方法
閉じこもりを改善したい通所介護(デイサービス)。自宅までの送迎があり、外出の機会になる
歩く力を取り戻したい訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション
自分で選んで買い物をしたい訪問介護の外出介助や、店まで一緒に行き本人が品物を選ぶ見守り的援助
気分転換に外を歩きたい自費(介護保険外)の訪問介護サービス、家族の付き添い

デイサービスと訪問介護の組み合わせ方はデイサービスと訪問介護は併用できる?で整理しています。介護保険の訪問介護と自費のサービスを同じ日に使うときの決まりは、自費の訪問介護サービスとは?介護保険との組み合わせ方(混合介護)を参考にしてください。

ヘルパーに頼める範囲の線引きは、散歩以外にもあります。薬の扱いについては訪問介護の服薬介助、どこまで頼める?で同じように整理しています。

散歩の付き添いを相談する前に押さえること

  • 散歩は老計第10号に項目がなく、気分転換や日課としての散歩の付き添いは訪問介護の対象にならない
  • 歩く力の維持や閉じこもりの改善のためにケアプランに位置づけ、ヘルパーが常に介助できる状態で見守る散歩は、身体介護の「見守り的援助」として認められることがある(平成21年7月24日の国の事務連絡)
  • ほかのサービスを先に検討させるか、市への相談票が要るかなどは、市区町村ごとに違う
  • ケアマネジャーには、外に出なくなった経緯・歩くときの様子・取り戻したい生活の3点を伝える

外出の介助にどう応じているかは、事業所によっても違います。介護ほうもんさーちの検索で親の自宅の住所から訪問できる事業所を絞り込み、契約前の面談で、外出の介助や見守り的援助をどう行っているかを聞いてみてください。