「夜のヘルパーさんが来られなくなる」——そんな見出しをニュースで見て、不安になった方もいるのではないでしょうか。特に、夜間対応型訪問介護をすでに利用している方、これから検討していた方にとっては、他人事ではない話です。
先に、要点をまとめます。
- 2026年4月3日に閣議決定、同年6月19日に成立した「社会福祉法等の一部を改正する法律案」により、夜間対応型訪問介護は2027年度(令和9年度)に制度上廃止されます。ただし旧制度の規定を3年間維持する経過措置が設けられており、2027〜2029年度は実質的にサービスを利用し続けられる見込みです。
- 統合先は「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」です。両者は「決まった時間の定期訪問+随時のコール対応」という機能・態様が似ているため、限られた介護人材を有効活用する目的で一本化されます。
- 具体的な報酬体系や人員配置基準の特例は、2027年度の介護報酬改定に向けた議論の中で決まります。現時点で「今すぐ何かをしなければならない」状況ではありませんが、事業所の対応状況やケアプランへの影響は、時期を見てケアマネジャーに確認しておくと安心です。
ただし一つ、後半で必ず触れておきたい注意点があります。統合先の定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、本来「日中+夜間」をセットで提供する設計のサービスです。夜間だけを使いたい方がそのまま切り替わると、利用料が今より高くなる可能性があります。この点をどう緩和する仕組みが用意されているかは、記事の後半で具体的に説明します。
夜間対応型訪問介護は、いつ・なぜ廃止される?
2027年度(令和9年度)に制度上廃止されますが、旧制度の規定を3年間維持する経過措置があり2027〜2029年度は利用を継続できます。廃止の理由は、夜勤を担う介護人材の確保が全国的に困難になっているためです。
2026年4月3日、政府は介護保険法の改正を含む「社会福祉法等の一部を改正する法律案」を閣議決定し、通常国会に提出しました。法案は同年6月19日に成立し、夜間対応型訪問介護は令和9年4月(2027年4月)の施行日をもって、地域密着型サービスの類型から外れることになります。制度そのものの概要は夜間対応型訪問介護とはにまとめていますが、本記事ではこの後成立した法律に基づき、施行日・経過措置期間・費用面の見込みまで踏み込んで整理します。
廃止の背景にあるのは、介護業界全体を覆う深刻な人材不足です。夜間対応型訪問介護は、オペレーションセンターでの通報受付と、夜間の巡回・随時訪問を組み合わせた重装備のサービスで、過酷な夜勤を担える介護職員を安定的に確保することが年々難しくなっていました。結果として、全国的にサービスを提供する事業所自体が限られた地域に偏り、「制度はあるのに、身近に使える事業所がない」という状態が広がっていたことが、統合の議論を後押ししました。
ただし、廃止といっても「ある日を境に一斉にサービスが止まる」わけではありません。法律には、廃止前の旧法の規定を3年間維持する経過措置が盛り込まれており、2027年度から2029年度までの第10期介護保険事業計画期間中は、既存の夜間対応型訪問介護をそのまま利用し続けられる見込みです。ご家族が今まさに夜間対応型訪問介護を利用している場合、「来年度からいきなり使えなくなる」と慌てる必要はありません。
この経過措置は、事業所側にとっても急な廃業や利用者の受け皿探しに追われずに済む猶予期間という意味を持ちます。介護保険制度の改正では、こうした「旧規定をしばらく維持する」形の経過措置がしばしば設けられますが、今回のように3年間という比較的長めの期間が確保されている点は、利用者・事業所双方への影響の大きさを国が重く見ていることの表れといえます。実際に社会保障審議会の介護給付費分科会では、廃止方針そのものへの異論は少ない一方で、「移行を急ぎすぎて、必要な人にサービスが行き届かなくなること」への懸念が繰り返し出されており、経過措置の期間や特例の設計は今後も慎重に詰められていく見通しです。
統合先の「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」とは何が違う?
どちらも定期訪問と随時のコール対応を組み合わせたサービスですが、定期巡回・随時対応型訪問介護看護は日中も含めた24時間対応が基本形で、訪問看護との連携機能も持つ点が異なります。
夜間対応型訪問介護と定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、どちらも「決まった時間に短時間訪問する定期巡回」と「利用者からの通報を受けて随時訪問する随時対応」を組み合わせた仕組みという点で、機能・態様が類似しています。厚生労働省の審議会でも、この類似性が統合の主な根拠として挙げられています。一方で、次のような違いがあります。
| 項目 | 夜間対応型訪問介護 | 定期巡回・随時対応型訪問介護看護 |
|---|---|---|
| 対応する時間帯 | 夜間(22時〜6時が中心) | 日中+夜間の24時間 |
| サービスの中心 | 介護(身体介護中心) | 介護+看護の一体的または連携提供 |
| 報酬の考え方 | 夜間の利用実績に応じた設定 | 要介護度に応じた月額包括報酬が中心 |
| サービス区分 | 地域密着型サービス | 地域密着型サービス |
| 対象者の目安 | 夜間の見守り・排泄介助等が必要な人 | 中重度で日中も随時の対応が必要になり得る人 |
もっとも大きな違いは、定期巡回・随時対応型訪問介護看護が「日中+夜間」をセットで提供する設計になっている点です。夜間対応型訪問介護は夜間だけに特化したサービスなので、日中は他の訪問介護事業所やケアマネジャーが個別に組み立てたケアプランで対応するのが一般的でした。統合後は、この「夜だけ」というニーズに、24時間対応が前提のサービスがどう応えるかが実務上の焦点になります。
夜だけ利用したい人の費用が高くなるって本当?
本当です。ただし2024年度の介護報酬改定で「夜間対応型区分」という、夜間のみの利用に絞った報酬区分がすでに設けられており、この仕組みが2027年度以降の移行時にも引き継がれる見込みです。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護は、本来「日中の定期巡回+随時対応+夜間対応」をまとめて提供することを前提にした月額包括報酬のサービスです。夜間対応型訪問介護からそのまま移行し、日中+夜間セットの通常区分での利用を求められると、「夜だけ使いたいのに、日中分の費用まで負担することになり、利用料が高すぎて使えない」という事態が起こりかねません。実際、この費用面の課題は審議会でも繰り返し指摘されてきました。
この課題に対応するため、2024年度の介護報酬改定で、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の中に「夜間のみ利用する場合の報酬区分(夜間対応型区分)」がすでに設けられています。既存の夜間対応型訪問介護の利用者が定期巡回・随時対応型訪問介護看護へ移る際に、日中分まで負担せずに済むようにする仕組みです。ただし、この区分の実際の利用実績はまだ限定的で、事業所側の体制整備や制度の周知が追いついていない面もあります。2027年度の介護報酬改定に向けた議論では、この夜間のみ区分の報酬水準や人員配置基準について、さらに実情に合わせた見直しが検討される見通しです。
ご家族の場合に当てはめるなら、「夜だけ使えれば十分」という利用のしかたをしているご家庭ほど、移行後の費用がどう扱われるかを早めに確認しておく価値があります。逆に、すでに日中もデイサービスや別の訪問介護事業所を組み合わせて使っている方の場合は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護に一本化することで、複数の事業所とのやり取りが1つにまとまり、かえって管理しやすくなる可能性もあります。どちらのパターンに近いかによって、移行のメリット・デメリットの出方が変わってくるため、「今の利用状況を、日中と夜間に分けて書き出してみる」ことが、判断の第一歩になります。
今、夜間対応型訪問介護を使っている家族は何をすればいい?
2029年度までは経過措置で利用を継続できるため、今すぐ手続きが必要になるわけではありません。ただし事業所からの案内や、ケアマネジャーとの定期的な確認は続けておくと安心です。
制度改正のニュースを見ると「今すぐ何か対応しなければ」と焦りがちですが、経過措置の期間中(2027〜2029年度)は、これまで通りのサービスをそのまま利用できる見込みです。現時点で家族が具体的に動く必要がある局面ではありません。とはいえ、次のような点は押さえておくと、いざ制度が動き出したときに慌てずに済みます。
- 利用中の事業所が移行方針を持っているか: 夜間対応型訪問介護の事業所は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護への転換を検討している場合があります。事業所の説明会や重要事項説明書の改訂案内には目を通しておくと安心です。
- ケアプランの見直し時期に合わせて確認する: 要介護認定の更新やケアプランの見直しのタイミングは、制度変更の影響を確認する自然な機会になります。ケアマネジャーに「うちの利用しているサービスは今回の改正の対象ですか」と一言添えるだけで十分です。
- 2027年度の報酬改定の内容が固まった時点で再確認する: 夜間のみ利用時の具体的な報酬額や人員配置の特例は、2027年度の介護報酬改定で確定します。この時期に、担当のケアマネジャーや事業所からあらためて説明があるはずです。
これから訪問介護を検討し始める方については、現時点で新規に夜間対応型訪問介護を契約すること自体は制度上可能ですが、数年内に制度が切り替わることを踏まえ、定期巡回・随時対応型とは?1日複数回の訪問も一緒に確認しておくと、将来の見通しが立てやすくなります。すでに定期巡回・随時対応型訪問介護看護を利用している方にとっては、今回の統合はサービス内容が大きく変わるものではなく、夜間対応型訪問介護の利用者を受け入れる制度側の器が広がる、という位置づけになります。
事業所側の実務としては、指定基準や人員配置基準を新しいサービス類型に合わせて満たし直す手続きが必要になるため、既存の夜間対応型訪問介護事業所がすべて自動的に定期巡回・随時対応型訪問介護看護へ切り替わるわけではありません。夜勤帯の看護職員の確保が難しい事業所では、訪問看護ステーションとの連携という形で必要な機能を満たすケースも想定されます。利用者側から見ると、契約している事業所の名称やサービス類型が変わっても、日々の訪問の担当者や訪問の内容が急に変わるとは限らない、という理解でまず問題ありません。変更の詳細は、契約している事業所からの重要事項説明書の改訂案内で示されるのが通常の流れです。
移行にあたって確認しておきたい注意点
制度の切り替わりでは、次のようなつまずきが起こりやすいと考えられます。あらかじめ知っておくことで、慌てずに対応できます。
- 「廃止=即利用不可」という誤解: 経過措置の3年間を知らずに、「来年度から使えなくなる」と早合点して他のサービスへ性急に切り替えてしまうケースです。実際には2029年度まで猶予があるため、まずは現在利用中のサービスを維持しながら、事業所やケアマネジャーの案内を待つのが基本の対応になります。
- 費用区分の変化を確認しないまま移行するケース: 前述のとおり、夜間のみ利用する場合の報酬区分が用意されていますが、事業所によって案内のタイミングや説明の丁寧さに差が出ることがあります。契約内容の変更案内があった際は、月額の自己負担がどう変わるのかを具体的な金額で確認しておくと安心です。
- 地域に定期巡回・随時対応型訪問介護看護の事業所がない場合: 定期巡回・随時対応型訪問介護看護は地域密着型サービスのため、市区町村ごとに指定事業所数に限りがあります。夜間対応型訪問介護から移行する事業所が身近にあるかどうかは、地域によって差が出る可能性があります。心配な場合は、地域包括支援センターに、お住まいの地域の指定状況を確認してみてください。
事業所やケアマネジャーに、今のうちに聞いておけること
いきなり大きな決断を迫られる話ではありませんが、今日からできる小さな確認はあります。次に事業所やケアマネジャーと話す機会があれば、「今回の制度改正の対象になるサービスを使っているか」「対象なら、事業所として今後どう対応する予定か」の2点だけ聞いてみてください。それだけでも、ご家族の状況が今回の改正とどう関わるのかが具体的に見えてきます。
事業所ごとの対応方針や実施地域の違いは事業所によって差があるため、比較検討したい場合は介護ほうもんさーちの検索から、実施地域や対応サービスで絞り込んで確認できます。事業所選び全体の考え方は訪問介護事業所の選び方と比較のポイント、ケアプランの見直しについてはケアプランと訪問介護の位置づけ、相談先に迷ったときはケアマネ・地域包括支援センターへの相談も参考にしてください。
在宅で夜間の見守りに不安がある場合、高齢者の熱中症は自宅で最も多く起きる|猛暑の見守りと訪問介護の使い方で取り上げた「訪問と訪問の間の時間帯をどう埋めるか」という考え方も、夜間の見守り体制を考えるうえで参考になります。
この記事で持ち帰れること
ここまでの内容から、次の3点を判断材料として持ち帰っていただけます。
- 夜間対応型訪問介護は2027年度に制度上廃止されるが、経過措置により2029年度までは実質的に利用を継続できること
- 統合先の定期巡回・随時対応型訪問介護看護は日中+夜間セットが基本だが、夜間のみ利用する場合の報酬区分がすでに用意されており、この仕組みが移行時にも活かされる見込みであること
- 今すぐの手続きは不要だが、ケアプランの見直し時期や2027年度の報酬改定のタイミングで、利用中のサービスが対象かどうかをケアマネジャーに確認しておくと安心なこと
まずは、次の確認機会に一言添えてみませんか
今日、何かを申請したり契約を変更したりする必要はありません。ただ、次に担当のケアマネジャーと話す機会があれば、「うちが使っているサービスは、今回の制度改正の対象になりますか」と一言聞いてみてください。それだけで、ご家族の状況が今回の改正とどう関わるのか、具体的な見通しが立ちます。
夜間の見守り体制そのものを見直したい場合や、地域の事業所の対応状況を比較したい場合は、介護ほうもんさーちの検索ページから実施地域・対応サービスで絞り込んで確認できます。サイトについてのご相談はお問い合わせからお受けしています。制度は数年かけて段階的に切り替わります。焦らず、確認できるところから少しずつ進めていただければと思います。

