親の介護を担っていた配偶者や子どもが、急に入院することになった。そうなると、家に残る親の食事や排せつ、夜の見守りを誰が引き受けるのかが、その日のうちに問題になります。介護保険には、こうした「介護する人の急な不在」に対応するための仕組みがいくつか用意されています。連絡する順番と、足りなくなる支援ごとに使える仕組みを整理しました。
この記事の結論は、次の3つです。
- 入院が決まったら、まず担当のケアマネジャー(要支援の方や認定を受けていない方は地域包括支援センター)に連絡します。訪問の追加もショートステイも、ケアマネジャーとの相談を通して決まります。
- ケアプランに入っていない訪問が急に必要になったときは、ケアマネジャーが必要と認めれば、要請から24時間以内の身体介護を緊急の訪問として受けられる仕組みがあります。生活援助だけの訪問はこの仕組みの対象外です。
- 入院が数日以上続く場合は、ケアプランそのものを見直します。同居家族が病気で家事をできない事情は、生活援助を検討する理由になります。夜間も一人にできない場合は、ショートステイの緊急利用や市区町村の緊急ショートステイ事業を相談します。
家族が入院したら、最初に誰へ連絡する?
要介護の認定を受けている方は担当のケアマネジャーへ、要支援の方や認定をまだ受けていない方は地域包括支援センターへ連絡します。介護保険の訪問を増やしたり変えたりするには、ケアマネジャーとの相談が必要です。
訪問介護は、ケアマネジャーが作るケアプランに沿って提供されるサービスです。回数を増やす、時間帯を変える、別のサービスを足すといった変更は、どれもケアプランの見直しを通ります。家族の入院が決まった時点で、次のことをケアマネジャーに伝えてください。
- 誰が・いつから入院するか、退院の見込み(分からなければ「未定」と伝える)
- 入院する家族がこれまで担っていた介護(食事の用意、排せつの介助、服薬の声かけ、夜間の付き添いなど)
- ほかに手伝える家族がいるか、いる場合は何曜日・何時ごろなら来られるか
- 本人がその日一人で過ごせる時間の目安
ケアマネジャーがまだ決まっていない方や、要支援の方の相談先については、ケアマネ・地域包括支援センターへの相談で窓口の違いを解説しています。担当のケアマネジャーにすぐ連絡がつかない場合は、利用中の訪問介護事業所にも状況を伝えておくと、次の訪問の際にヘルパーが本人の様子を確認できます。
ケアプランにない訪問を、急に頼むことはできる?
できます。本人や家族からの要請を受け、ケアマネジャーが必要と認めた場合、要請から24時間以内に行う身体介護が「緊急の訪問」として扱われます。掃除や調理などの生活援助だけの訪問は、この仕組みの対象になりません。
介護報酬には「緊急時訪問介護加算」という項目があります。厚生労働省の自己点検シート(訪問介護費)では、算定の要件を「利用者又はその家族等からの要請に基づき、事業所のサービス提供責任者が介護支援専門員と連携し、介護支援専門員が事前又は事後に必要と認め、当該要請から24時間以内に居宅サービス計画において計画的に訪問することになっていない訪問介護を緊急に行った場合」としています。
兵庫県が事業所向けに要件を整理した通知(平成21年7月17日付「訪問介護における緊急時訪問介護加算の取扱いについて」)では、次の点も示されています。
- 身体介護が中心の訪問であること(生活援助のみは対象外)
- 1回の要請につき1回まで
- ケアマネジャーとの連携は原則として事前に行うが、やむを得ない場合は事後に必要と判断されれば対象になる
- 同じ理由で同じ月に何度も必要になるなら、ケアプランの見直しが必要
加算がつく訪問は、その分の自己負担(1〜3割)も増えます。また、事業所に空いているヘルパーがいなければ、要請しても訪問を組めないことがあります。急な入院の当日は「今日の夕方の食事介助と排せつ介助が抜ける」のように、抜ける支援を具体的に伝えると、ケアマネジャーと事業所が判断しやすくなります。
入院が長引くなら、訪問の回数や内容はどう変える?
緊急の訪問は1回ごとの対応なので、入院が数日以上続くならケアプランを見直して、訪問の回数・時間・内容を組み直します。同居家族が病気で家事をできない間は、生活援助を検討する理由になります。
同居家族がいる場合、生活援助(掃除・洗濯・調理など)は「同居家族がいる」というだけで一律に使えなくなるわけではありません。東京都港区の介護保険のよくある質問では、同居家族に障害や病気がある、高齢で体力が落ちている、といった事情で家事が困難な場合には、ケアプランで必要と判断されれば利用できると説明しています。介護していた家族が入院した期間は、まさにこの「家族が家事を行うことが困難」な状態にあたる可能性があります。判断はケアマネジャーのアセスメント(状況の確認)を通して行われるので、入院の期間と、入院前に家族が担っていた家事の中身を具体的に伝えてください。同居家族と生活援助の考え方は、同居家族がいると生活援助は使えない?よくある誤解と本当の判断基準で詳しく解説しています。
訪問を増やすときに確認したいのが、要介護度ごとに決まっている1か月の利用上限(区分支給限度基準額)の残りです。上限を超えた分は全額自己負担になります。今の利用量が上限に近い場合の考え方は、訪問介護の利用限度額、そろそろ超えそう。ケアプランを見直す前に確認したい3つのことを参考にしてください。
曜日や時間の変更だけで済む場合は、ケアプランの「軽微な変更」として扱われることもあります。どこまでが軽微な変更にあたるかは訪問介護の曜日・時間の変更で整理しています。
夜間も一人にできないときは、どうする?
訪問介護は決まった時間に訪問するサービスなので、夜通しの付き添いまでは担えません。夜間も一人にできない場合は、ショートステイ(短期入所)の緊急利用を、ケアマネジャーに相談します。
介護保険のショートステイには、介護する人の病気などで在宅の介護を受けられなくなった人を、ケアプランに予定のない日に緊急で受け入れる仕組みがあります。前述の厚生労働省の自己点検シートでは、短期入所生活介護の「緊急短期入所受入加算」の対象を、介護を行う者が疾病にかかっていることその他やむを得ない理由で居宅で介護を受けられず、ケアプラン上その日に利用する予定のなかった人とし、ケアマネジャーがあらかじめ緊急の必要性と利用を認めていることを要件にしています。ただし、受け入れられるかどうかは施設の空き状況によります。
市区町村が独自に緊急のショートステイ事業を設けている場合もあります。例として、東京都中央区の「緊急生活支援宿泊サービス(緊急ショートステイ)」は、介護者の急な入院などでほかに介護者がいない場合を対象に、原則1週間以内の利用ができ、費用はサービス費用の1〜3割と食費・滞在費・日常生活費です。東京都杉並区には、経管栄養や在宅酸素など日常的に医療行為が必要な方を対象にした「緊急ショートステイ(医療型)」があり、最長10日間、利用料は1日4,000円と食事代1日1,000円(生活保護受給者・区民税非課税世帯は利用料無料)です。対象や費用は自治体ごとに違うため、お住まいの市区町村や地域包括支援センターに、同じような事業があるかを確認してください。
ショートステイと訪問介護の組み合わせ方の基本は、レスパイト目的で訪問介護を組み合わせる考え方で解説しています。
家族の退院後は、すぐ元の体制に戻してよい?
退院した家族の体調が戻るまでは、増やした訪問をすぐに減らさず、段階的に戻すほうが無理がありません。戻すときもケアマネジャーに相談して、ケアプランを変更します。
手術や入院の後は、重い物を持つ、夜中に何度も起きるといった介護を、すぐには再開できないことがあります。退院の日程が分かった時点で、ケアマネジャーに次のことを伝えておくと、変更の調整がしやすくなります。
- 退院日と、医師から言われている生活上の制限(重い物を持たない期間など)
- 退院後しばらく家族が担えない介護(入浴の介助、移乗、夜間の排せつ介助など)
- 増やした訪問を、いつ・どの順番で元に戻したいか
今のうちに家族で決めておけることは?
ケアマネジャーと事業所の連絡先、本人の薬と通院の情報、代わりに動ける家族の連絡先の3つを、誰が見ても分かる場所にまとめておくと、急な入院の日に連絡が止まりません。
急な入院は、本人の介護をしていた家族自身が連絡できない状態で起きることもあります。次の情報を紙1枚にまとめ、冷蔵庫の扉など家族全員が知っている場所に貼っておくと、ほかの家族が代わりに連絡できます。
| まとめておくこと | 具体例 |
|---|---|
| 連絡先 | ケアマネジャー、訪問介護事業所(夜間・休日の連絡先も)、かかりつけ医 |
| 本人の情報 | 飲んでいる薬、通院の予定、食事で気をつけること |
| 家の情報 | 合鍵の置き場所、ヘルパーが訪問する曜日と時間 |
| 代わりの家族 | 連絡がつく家族の名前と電話番号、来られる曜日 |
あわせて、お住まいの市区町村に緊急ショートステイの事業があるか、利用中の事業所が急な訪問の依頼にどう対応しているかを、次のサービス担当者会議などで確認しておくと、当日に一から調べる手間が減ります。本人や家族が感染症にかかったときの連絡の順番は、本人や家族がインフルエンザ・コロナにかかったら、訪問介護は来てくれる?で整理しています。
この記事で確認できたこと
- 家族の入院が決まったら、まずケアマネジャー(要支援・未認定は地域包括支援センター)に連絡する
- ケアプランにない緊急の訪問は、要請から24時間以内の身体介護で、ケアマネジャーが必要と認めた場合に受けられる。生活援助だけの訪問は対象外
- 入院が続く間はケアプランを見直し、同居家族が家事をできない事情を伝えて生活援助を検討してもらう。利用上限の残りも確認する
- 夜間も一人にできない場合は、ショートステイの緊急利用や市区町村の緊急ショートステイ事業を相談する
これから訪問介護事業所を選ぶ段階であれば、緊急時の連絡先や急な依頼への対応を、契約前に重要事項説明書で確かめておくと比べやすくなります。どの項目に書かれているかは訪問介護の契約と重要事項説明書の見方で確認できます。

